ep.087 ボコられるボンと容赦無い礼司
岸田は、仁と智巳が一発づつ顔と腹を殴っただけて、へたり込む。
隙を見て、足速に停めてあるニッサン・プレジデントに乗り込むと、ボンと呼ばれた男を見捨てて走り去ってしまった。
一方、礼司は、容赦無くボンと呼ばれた男をどつき倒している。
「オッサン、ドコがヤクザやねん、あー。誰のツレに手ー出してんのか、理解ってんのか!コラっ、あー!」
礼司は、政から素人には手を出すなと言われていたが、不義理なヤクザはツブしていいと厳しく教育されていたのだ。
喧嘩慣れしていないボンは、あっと言う間に消えてしまった岸田にやっと気付き、呆然とする。
「かっ、勘忍や・・・。俺が悪かった・・・。アンタのツレやと思えへんかったんや・・・」
礼司は殴るのを止めない。
政から言われていた。
『闘るなら徹底的に闘れ。但し、素手格闘だけでな』
顔がみるみる腫れていく、
「ゴメンや・・・、もうせーへんから、勘弁してくれや・・・」
それでも、礼司は止めない。
遂にボンと呼ばれた男は姿勢を崩すと、土下座をし許しをこう。
「うっ・・・。すいませんでした・・・」
ボンと呼ばれた男のスーツは、自信の顔から流れる血と漏らしたションベンで汚れてしまっている。
瑠奈が悲惨な状況を見て、ボンと礼司の間に止めに入った。
「礼司さん、もぅ、ァタシはぃぃから、止めてぁげて」
礼司は、瞬時に修羅の如き顔から、人懐っこい子犬の様な顔に戻ると、
「ホントに大丈夫なんですか?瑠奈さん」
瑠奈は大きく頷き、
「ァタシは、大丈夫ですから」
礼司は、ボンに向かって諭す。
「なぁ、オッサン、この子がこう言ってるから、勘弁したるわ。瑠奈さんに感謝せーよ」
ボンは、初めて人違いに気付いたみたいで、もう一度すんませんと頭を下げると、タクシーを捕まえ乗り込んだ。
ただ、去り際に窓を開け、覚えとけ!と吐き捨てる事は忘れなかった。
パトカーのサイレンが近付くのを、礼司が気付き、
「じゃ、俺達はこれで」
そう言い残すと、走り去った。
ポツンと残された瑠奈は、礼司に感謝し、
《なんか凄かったなぁ・・・。そぅだ、後で政さんトコ行く時に、ぉ礼言わなきゃ・・・。だったら、“満腹堂”のヨモギ大福も買っとかなぃと・・・》




