ep.085 “ボン”の二つの意味とタコさんウインナー
ハルナは、瑠奈の頭をくしゃくしゃっとすると、
「この場合は、ウチは“ボン”に二つの意味が有ると思う。一つは、“坊ちゃん”。これは表の意味。もう一つが・・・」
瑠奈が、恐る恐る答える。
「“ボンクラ”?」
「そや!よー解ったな。裏の意味は、“ボンクラ”や。腰ぎんちゃくのオッサンは、少なくとも心の中では、会長やと認めてないと思うで、ウチは」
「そーなんだ・・・」
瑠奈は、少し雪江の兄を憐れんでいる様だ。
「アンタは、誰に対しても優しいな・・・」
ハルナは瑠奈をギュッと抱きしめる。
「後な、会長もそうやけど、腰ぎんちゃくのオッサンも部下の事考えてない様に思えたわ」
「他にも、何か有ったの?ハルナ?」
ハルナは、ため息を吐き、
「そやねん。ウチがその会長と揉めてる時に、部下の山崎ってヒトが血相変えて飛び込んで来たんやけど・・・」
「けど・・・?」
「最低やで、部下の話は聞かずに別の店行くゆーて、出て行ったんや。しかも、払いは腰ぎんちゃくのオッサンと、足りない分は飛び込んで来た部下が払ってんで!」
「ぅわ~、最低だね・・・」
「ウチが部下やったら、キレてるな。上のモンの資格無しや」
瑠奈も大きく頷き、
「なるほどね・・・。でも、どぅして、ァタシに?」
ハルナはニヤリと笑うと、
「アンタの事やから、雪江ちゃんと政さんの仲を取り持とうと考えてるやろ?」
瑠奈は、うんと頷いた。
「ウチの話は、雪江ちゃんじゃなく、政さんにしてあげたらエエわ」
「了解った。雪江ちゃんの後で、政さんに言ってぉくょ」
ハルナは、微笑んで頷き、
「じゃあ、ウチは戻って寝るわ。そや、瑠奈。たまには、一人Hし~やっ、さっき触ってみて思ったんやけど、アンタ、欲求不満やで・・・。クスッ」
瑠奈は、真っ赤になって俯き、
「もぅ、ハルナ、最悪~っ!」
と顔を上げた時には、ハルナは消えていた。
瑠奈は、バスルームから顔を出し、思わず零す。
「逃げ足だけは、ホントに早ぃんだから・・・」
瑠奈は、シャワーの栓を止めると、前もって掛けてあったバスタオルを取る。
身体を拭きながら、既に頭の中は雪江の為に作るお弁当の事でいっぱいだった。
《雪江ちゃん、タコさんウインナー好きかなぁ・・・》




