ep.076 アタシを弟子にして下さい。
「駄目に決まってます」
「そうナノ?それくらい出さないと全国の猛者達ハ、出てこないと思うケド?」
JJは本気だ。
「第一そんな事したら、全日本剣道連盟から、何て言われるか・・・」
戸惑う桜子に、JJはニヤリと笑い、
「ボクは“剣道大会”を開くトハ、言ってないヨ」
「え?」
桜子は驚く。
「ボクが開きたいノハ、“剣術大会”。だから全日本剣道連盟は関係ないヨ」
「どう言う事ですか?」
JJは少し考え、
「つまりネ、防具を付けての普通の面・胴・小手の剣道では無ク、フルコンタクトの空手に近い剣術の大会をしたいのサ」
「それって、時代劇とかでたまにある、御前試合みたいなものですか?」
JJは大きく頷き、
「そうだヨ。さすがに真剣ダト、死んでしまうカラ、そこハ、柄の付いた木刀カ、竹みつの模造刀かなぁ。居合の流派も在るしネ。昔々の明治維新で廃刀令が出て、沢山の剣の流派が消えたネ。ボクは、凄くソレが残念・・・。アレこそ、日本の文化なのニ。ダカラ、昔、桜子ちゃんの伯父さんや真と闘った時、密かに嬉しかったものサ」
JJは、遠い目をして懐かしむ。
桜子は更に驚いて、
「光次郎伯父さんと戦闘ったんですか?しかも、真様とも?」
JJは頷き、
「昔は、皆んな血気盛んだったカラ。鷲尾乙女流、面白いネ。真も強いサ。彼は柳生新陰流の使い手ダヨ」
「そうだったんだ・・・」
「まー、頑張ってヨ、桜子ちゃん。君なら勝てるでショ?」
「まぁ、おそらく・・・」
「じゃあ、桜子ちゃんの弱点は教えなくていいよネ」
JJは意地悪に言う。
桜子は身を乗り出し、
「いえ、教えて下さい」
JJはため息を吐くと、
「しょーがないなぁ、特別ダヨ。桜子ちゃんの動きは、凄く直線的なのサ。素人にはそれでもいいケド、場数を踏んだ玄人には、それだと簡単に攻略されてしまうサ。少しでいいカラ、トリッキーな動きヲ、してご覧」
桜子は目を閉じしばし考える。
次に目を開いた時には、どうすべきなのか、答えは出でいた。
桜子はJJを見据えると、真顔でこう言った。
「理事長、いや、獅子沢先生。アタシを弟子にして下さい」




