ep.061 生まれる家は選べへん
鉄はこころを諭す。
「いずれ、時代がお前をほって置かんよーになるよ。とりあえず、ホットケーキ食おーや」
鉄は、一枚当たり直径約20cm、厚さ2cmはある生クリームたっぷりの三段重ねのホットケーキの1/4を器用に切り取り、一口でパクりと食べた。
あまりの美味しさに握りこぶしを作る。
「最高~や!はよ、こころもお食べ」
こころは、はぁとため息を漏らすと、ホットケーキを口に運んだ。
目を大きく見開き、
「何ね、このホットケーキ!無茶苦茶、美味か~」
鉄がこころの表情に満足し、
「大阪府警に入ったら、さっきのトンカツや、このホットケーキ、ほんでまだまだ教えてない美味い店、連れてったんのになぁ・・・」
こころは考える。
《ん~、確かにそれは有りとよ・・・》
鉄がアイスコーヒーを一気に飲み上げ、お代わりを注文した時に、こころが、
「鉄さん、聞きたか事があるとよ。“河内稲美会”ってヤクザ知っとっと?」
「ん?富田森のか?」
鉄が平然と言い、グラスの氷を口に含むと、かみ砕いた。
「うん」
「まぁ、いずれ判明る事やから、先言うけどな、俺の実家、“天道白虎会”の宗家やねん」
突然の告白に、こころはかなりびっくりした様子で、
「えーー!鉄さんち、ヤクザやったと?“天道白虎会”ってニュースとかにもたまに出てくる?」
「そや、いわゆる広域指定暴力団や。今はまだ祖父ちゃんが現役で頑張ってるけどな」
こころは素直に驚き、
「ちゃー、かなりびっくりしたとよ」
「ガハハ。生まれる家は選べへんからなぁ。で、何でウチの実家の話したかというと、“河内稲美会”は、ウチの下部組織の一つやからや。もっとも、付き合いもかなり古いはずやで。先々代の頃に、ウチの傘下に入ったはず」
「今の組長は、知っとっと?」
鉄は、腕組をし、うーん?と考える。
「確か、ややこしいねん。あの組、跡目関係が・・・」
「何ね?それ?鉄さん」
「今の組長、長老連中に承認されてないんや。ウチの祖父ちゃん、怒ってたもんなぁ・・・」
こころは身を乗り出し、
「詳しく聞かしてもらってよかですか?」
鉄は思う。
《食いつきがエエなぁ。ちょっと刑事の英才教育してみよか・・・》




