ep.060 自然災害みたいなモンや
「綺麗な人ったいねー、相原刑事って」
「こころもそう思うか?」
こころは頷く。
「カッコよかです」
「でも、上司運が悪くってな・・・。見た目が良すぎるのも良し悪しやな。性格サバサバして、俺は好きやねんけどな」
「で、鉄さん。さっきの事ですけど・・・」
「あー、あれな、海に落ちたマークXに海流に乗ってきたサバイバル・ナイフが、たまたま刺さったって事にしといたんやけど、アカンかったか?」
鉄は、更に悪戯っぽくニイっと笑い。
「ゆーてみたら、自然災害みたいなモンや。違うんか?」
こころはNoとは言えなかった。
《助かった~!》
こころは頭を下げる。
「鉄さん、助かりました」
鉄は、わざと不思議そうな顔をして、
「あ?何で頭下げんねん?頭下げるんやったら、オリンピックで金メダル取って、俺に見せてくれや。それでエエわ」
「はい、良かです。実物ば、持ってきます」
鉄は、カウンター内でホットケーキを盛り付けている理恵子に、
「理恵子ちゃん、聞いたか?金メダル、見せてくれんねんて~。良かったなぁ」
理恵子が返事をする。
「ホンマやなぁ。楽しみやわ、お客さんにこころちゃんの活躍見てもらえるように、壁に掛けるおっきいテレビ買うわ~」
《うわぁ、これはマジで取りに行かんと、ヤバかよ・・・》
鉄はニッコリ笑い、
「ほな、こころ。約束しよか?」
「へっ?何をです?」
「決まってるがな、金メダル取られへんかったら、大学卒業して大阪府警に入る。言っとくけど、銀や銅、取ったから約束無しは、認めへんで!」
鉄は、獲物を追い詰める虎の如く吠えた。
「げっ!マジっすか?」
「出来るんやろ?出来るんやったら問題無いがな。誰も高校卒業してって言うてないで。大学の後でって、俺は言ってるやん。しかも、夏だけやのーて、冬も出るんやろ?何回チャンスあんねん。なぁ、理恵子ちゃん?」
理恵子は、アイスコーヒーと生クリームたっぷりをたっぷりトッピングした特製ホットケーキを鉄とこころの前に置き、
「ホンマやなぁ。鉄さん、ウチ、幾つ金メダル見せてもらえるんやろ。楽しみやわぁ~」
こころは、トホホな面持ちで、
《ちゃー。やらかしたーー。凄か約束手形ば切らされたとよ・・・》
もっとも、こころは大学卒業までに、幾つか金メダルを取った上で、大阪府警に入り、鉄の相棒になるのだが、これはまた別の話で・・・。




