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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
一日目
6/243

ep.006 学園のヌシ

聖クリストファー学園国際高等学校には、“ヌシ”がいる。

厳密には、学園を中心として半径3キロ四方の“ヌシ”の様な猫というべきか・・・。

齢、18歳にもなろうかというその猫は、不思議な事に猫にしてみればそんな高齢にもかかわらず、白髪も生えてなければキバも抜ける事もなく、若々しかった。

見てくれは、一見、白黒の綺麗な八割れ模様の雄ネコである。

が、ただ大きかった。

長い尻尾の先まで入れると裕に120cmは越え、体重は10キロ以上あると思われた。

その猫、名を“リュウノスケ”という。

名付け親は伝説を作った卒業生らしい。

この聖クリにおいて、リュウノスケが懐くのは、校長・上田と理事長・JJだけで、この二人以外からは、決して餌を差し出しても食べようとしないのだ。

桜子でさえ、挨拶が限度である。

なんでも噂では、リュウノスケがみーみー鳴く頃から、JJは知っているらしい。

アイツは待っている人がいるのさと、JJが言ったとか、言わないとか。

“聖クリ七不思議”の一つ、リアル“百万回生きた猫・リュウノスケ”である。


そんなリュウノスケが、学園の裏門近くにある駐輪場で、しかも、こころの愛機ヤマハ・V-maxのシートの上で寝ている。

こころはリュウノスケを見るなり、

《あちゃー、ヤバか猫がいるっとよ。どげんすっと・・・》


聖クリの生徒は知っている。

ヘタにリュウノスケに手を出すと、大怪我をする事もある事を。

実際、一昨日、こころの同じクラスの岸本光が悪友と、リュウノスケの尻尾を掴めるか?という賭け事をして、猫パンチをまともに喰らい一週間の怪我をしている。

幸いだったのが、聖クリにしては珍しい男子生徒だったくらいか・・・。


とはいえ先を急ぐこころは、リュウノスケに優しく声を掛ける。

「リュウノスケ~、起きるったい。朝ですよ~」

実際は夕方であった・・・。

リュウノスケは眼を開ける事もなく、バン!と尻尾でガソリンタンクを叩く。

嫌だと言っているみたいだ。

《うわぁ、機嫌最悪ったい・・・》

こころはリュウノスケに手を合わせ、

「リュウノスケ、お願い!退いてくれんね、ウチは急いで行かんとアカンとよ」

と頼み込む。

リュウノスケは、チラリとこころを見、ふわぁ~と大きなアクビを一つ、そして、身体をんーと伸ばし、スタっとV-maxから降りる。

「ありがと、リュウノスケ。助かったたい」

こころがそう言って、バイクに跨がり、自分専用の白地にスカイブルーで左右に羽が描かれたヘルメットを被った時、珍しい事が起こった。

懐かないハズのリュウノスケが、こころの左足首に頭を擦り付け、早く行けと示した様に見えたのだ。

こころは微笑むと、左手で軽くリュウノスケの頭を撫でてやり、手早くキーを差し込みONに回す。

セルスイッチを押すと、V-maxが心地良い重低音を響かせ咆哮する。

桜子に借りたヘルメットを左腕に通すと、

「行ってきます」

そうリュウノスケに言い残し、こころは学校を後にする。

《リュウノスケって、あんなに人懐っこか猫やってんね・・・。知らんかったったい》

そんな事を思いながら、バイクを駅に向かい走らせた。

こころのV-maxだと、途中信号で引っ掛かっても、3分もあれば駅に着くだろう。

風が心地良かった。


残されたリュウノスケは、こころが見えなくなるまで見送ると、なぁ~ごと鳴くとくるりと回り、理事長室を目指してしなやかに歩き出した。

どうやら、ディナータイムの様だ。

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