ep.056 心配な政と目を覚ましたトメ
政は、エレベーターを使って3階に降りて来た。
トメさんの病状が気になったのだ。
政の指示通り、陰に隠れナースステーションの前の301号室の様子を伺っている礼司に、
「どうだ?何か動きあったか?」
「あっ、アニキ。さっき雪江お嬢さんが出て行かれました。後は、特に・・・」
「そうか、分かった。礼司、腹減ったろ?これでラーメンでも食ってこい。ここは俺が見るから」
そう言って政は、礼司のシャツの胸ポケットに一万円札を捩り込む。
礼司は素直に頭を下げ、なるたけ早く戻りますと告げ、階段を使い降りて行った。
政が、しばしトメさんの病室を眺めていると、ナースが巡回に出る為ナースステーションにから出て行くのが見えた。
政は、思い切って301をノックして中に入る。
トメさんは点滴を受け、眠っていた。
「トメさん・・・」
政は思わず声に出し、呼び掛ける。
懐かしい声が届いたのか、トメは意識を取り戻そうと顔に少し反応があった。
もう一度、政は声を掛けた。
「トメさん、聞こえますか?俺です、政です」
政の思いが届いたのか、トメはパチリと目を開け、政に顔を向けると不思議そうに、
「あれ?ここは天国かい?政さんがいるよ」
政は思わず涙目になり、
「トメさん!気が付いたんだ。良かった・・・」
そんな言葉を聞いたトメは手で目を擦り、政を凝視する。
「えっ?政?本当に政さんかい?」
「はい、政ですよ。ちゃんと生きています。トメさんには心配かけました」
トメはゆっくり身体を起こすと、
「アタシは、てっきり巻き添えになって死んだモノだと・・・」
「はい、実際、死にかけてました・・・」
「そうなのかい、今は大丈夫なのかい?」
「今んところは、傷はたまに疼きますが・・・」
トメは嬉しそうに微笑む。
「そうかい、アンタがたっしゃで良かった・・・。そういや、政さん。ここは何処なんだい?何でアタシはこんなベッドの上なんだい?」
政は破顔すると、
「トメさん、ここは富田森記念病院です。俺も、ここに入院してるんですよ。聞いた話では、救急車で運び込まれたらしいです」
トメは、意識を失う前を思い出した。




