ep.046 働いた報酬
話込んでいるこころ、真魚、直子に、店主・次郎が厨房から声を掛ける。
「こころちゃーん。今だけ手伝ってくれへんけ?妙が用事で、今から家に帰るねん」
話を打ち切り、こころが立ち上がり、
「よかよ、おっちゃん。直子、アンタも手伝い」
直子も立ち上がり頷く。
次々と出来上がってくるるラーメンを、真魚とこころ、そして、何故だか直子も一緒に運んだ。
手慣れたもので真魚とこころは運びながら、合間に会計したり新しく入ってきた客の注文を聞いたりする。
また、ネットで噂になっている事もあり、こころ目当てのファンの女の子も客として来ているのだ。
こころは、許す限りサインや写真、握手などにも応じる。
直子は、さすがに配膳しか出来ないので、真魚とこころの二人の指示で愛想を振り撒きつつ、出来上がったラーメンを客先に持っていった。
小一時間もした頃であろうか、次郎がこころに声を掛ける。
「ありがとー、こころちゃん。助かったわ。今日はバイトの日とちゃうのに、すまんなぁ。真魚ちゃんも上がりやから、三人でコレ食べてんか」
次郎は煮玉子入り特製チャーシュー麺を三つ用意した。
「おっちゃん、ありがとー」
一つだけ器がやたら大きい。
器にこころ専用って書いてあった・・・。
既に座って寛いでいる真魚と直子の元に、こころが熱々のラーメンを運んでくる。
器をそれぞれの前に置き、それから、席に座った。
「直子、急に手伝わしてスマンかったね」
「いえ、楽しかったです」
「直子ちゃん、働いた後は、ラーメンが美味しかよ~」
真魚がニッコリ笑って、箸を直子とこころに渡した。
「じゃあ、真魚、直子。食べるね。いただきま~す」
「いただきま~す」
直子と真魚も倣う。
直子はスープをレンゲで一口分掬った。
豚骨の濃厚で、食欲をそそる香りが鼻を擽る。
すすってみると、思いの外上品で、飲み易すかった。
直子は漏らす。
「スープ、美味しい~」
こころと真魚は、顔を見合わせ笑う。
「その黒か油が、玉油と。それが更に美味くなるい秘密ねー。直子、麺も美味しかよ~。麺は博多から直送やから」




