ep.045 美味か博多ラーメン食べよう
「へい、らっしゃーい」
こころと直子が暖簾をくぐると、店員の威勢のいい声が聞こえてきた。
「おっちゃーん、おばちゃーん、来たとよ~」
こころも、負けじと笑顔で威勢よく返す。
店内はテーブル席一つを残して、満席であった。
「こころちゃん、そのテーブルに座って~」
厨房と客席を出たり入ったりしている女将さんの妙が、トレーにラーメンを載せ、運びながらこころに告げる。
「はーい」
返事をしたこころは、直子を伴い席に着いた。
すぐにアルバイトの女の子が、トレーに水の入ったコップを二つ載せやって来る。
コップをこころと直子の前に置き、
「いらっしゃい、こころ。今日は寮で食べるって言ってなかったと?」
「そんつもりやったけど、色々あってハラ減ったから、美味か博多ラーメン食べようと思ったったい」
「そうね~」
アルバイトの女の子とこころの会話を聞いていた直子は、少しびっくりして、
「こころ先輩、この方も先輩ですよね?」
直子が先輩と判断したのは、明らかに聖クリのスカートを履き、リボンを取ったブラウスの上にに、“博多っ娘、純情”と白い文字でプリントされた真っ赤なトレナーを着ていたからだ。
「ごめん、ごめん。紹介まだやったと。この店のトレナー着てるのは、ウチと同じクラスで、弓道とアーチェリーの両方に所属している真魚。ちなみに出身もウチと同じ福岡ね」
直子は立ち上がり、
「はじめましてってのも何か変ですよね。こんばんはも変だし・・・」
真魚はクスっと笑うと、
「よろしくでよかよ、後輩。ウチは雑賀真魚」
「あっ、じゃあ、よろしくお願いします、真魚先輩。アタシは・・・」
真魚が遮る。
「鈴木直子ちゃんじゃなかね?」
「はい、鈴木ですけど、なんで、アタシの事知ってるんですか?」
直子は、目を見開き、かなり甲高い変な声を出して驚いた。
自分でも変に聞こえたので、赤くなって照れる。
真魚は、アハハと笑い、
「最近、みぃが、直子ちゃん、アンタの事ばっかし部屋で話すと」
こころが、合いの手を入れる。
「直子、この真魚は、みぃとクレアと同室ったい」
「それでですか」
《でも、何て言われてるんだろ?》
無理矢理、納得した直子であった。




