ep.043 トメさんの搬送先
「アニキ、アニキ~っ」
礼司が、汗をかいて政の病室に駆け込んでくる。
「バカヤロー、病院は走るんじゃねぇ!他の病室の方に迷惑かかるだろうが!お前、トメさんの後追い掛けてたんじゃ・・・」
礼司は、袖で汗を拭くと、
「それがですねぇ、アニキ。そのばーさん、トメさんって言うんですか?この富田森記念病院に運ばれたんですよ」
「マジか?」
政は、驚く。
「雪江お嬢さんもご一緒です」
「部屋は?」
「はい、今は三階のナース・ステーション前の301です」
「そんなにヤバいのか?」
礼司は首を横に振ると、
「すいません、アニキ。そこまでは判りません」
「そうか・・・、他に動きは?」
「はい、俺が着いて間もなく、バイクに二人乗りをした女の子が訪ねて来ました。あっ、一人は俺よりデカかったです。しかも、乗り回しているバイクもデカいです」
「その二人は?」
「制服が瑠奈さんのと同じでしたので、同級生か何かかと・・・」
政は頷くと、
「理解った。今度は、トメさんの部屋見といてくれるか?」
「はい。じゃ、俺行きます」
礼司は、頭を下げ、出て行く。
こころと直子は、トメと雪江を載せた救急車の行き先を探して、富田森市内の救急医療をしている病院を廻った。
しかしながら、家族でもないものに運ばれた患者の事を教えてくれる事もなく、今は富田森記念病院近くのファミリーマートの駐車場に居た。
「ちゃー、どこもかしこも教えてくれんね」
「個人情報ですからね・・・。トメさんのフルネーム聞いておけば良かったですね・・・」
こころはため息を吐き、
「直子、もう一度、稲美さんの携帯、鳴らしてみてくれんね?それで繋がらんかったら、連絡くれる様、メール入れとって。ウチは喉が渇いたんで、何か買ってくると」
こころは店の中に入って行った。
直子は、携帯を取り出すと、雪江に電話を掛ける。
直ぐに留守電に切り替わった。
もう一度、試みる。
繋がらない。
直子の顔に、少し焦りが出た。
《トメさん、大丈夫かなぁ。ゆっきー、電話出てよぉ!》




