ep.042 こころの決意と見ていた男
「こころ先輩、戸締まりと火、大丈夫です」
戻って来た直子に、こころは黙って手紙を差し出す。
「何ですか?改まっちゃって?」
直子は、こころから手紙を受け取った。
読んでいくに従い、直子の標準が悲しく変わる。
最後には泣いていた。
「先輩、雪江が・・・、雪江がぁ」
こころは、直子を抱きしめてやる。
目を伏せ、
「強か娘ったい、あの稲美さんは・・・。あのコは、アンタの為に死のうとしてると。させん、ウチが絶対させん。そんな事しても誰も幸せならんばい・・・」
「こころ先輩、アタシはどうしたら?」
直子は涙目で訴える。
「そうね・・・。アンタはね、何もせんでよかよ」
「え?」
「普通に接してあげたらよか。全部、ウチに任せると。それから・・・、この手紙はウチが預かるとよ。よかね?」
直子は、コクンと頷く。
こころは軽くため息を吐くと、
「さて、トメさん、何処の病院に連れていかれたったいね?直子、連絡ば取ってみてくれんね?」
「はい」
直子は、雪江の携帯に電話する。
「こころ先輩、繋がらないです・・・」
こころは左手を顔に当て、
「ちゃー、しょうがなかね。とりあえず、幾つか大きい病院回ってみて、居なかったら寮で連絡を待つったい。直子、行こう!」
こころは直子に促し、玄関に向かって行った。
直子も後を追う。
その少し前、救急車が入って来たのを見つめる男がいた。
礼司である。
携帯を取り出すと、政に連絡を取る。
「アニキ、礼司です。何かあった様で、救急車が入ってきました。はい、ちょっと待って下さいね・・・。あっ、動きありました。ばーさんがタンカに乗ってます。それから・・・、お嬢さんも一緒に、今、救急車に乗られました。はいっ、はい、了解りました。後、追います。病院、判明ったら、また連絡します。じゃあ、はい、切ります。はい」
礼司は、ホンダ・CB400Fourに跨がると、エンジンに火を入れ、救急車を追い掛け始めた。
携帯を切った政は、ベッドの上で深くため息を吐き、
《トメさん・・・》




