ep.041 落ちた手紙
「実は私、あの時、病院で治療してもらって、偶然聞いてしまったの、ナオとアイツの会話」
雪江は、悲しい表情で告げた。
《何ね?このコ?兄をアイツ?なんか隠し事がありそうったいね・・・》
こころは、何ともいえない複雑な表情である。
「ここに鷹見先輩がいるって事は、ナオは話したのよね?」
「ごめんなさい、ゆっきー」
直子は謝った。
「ナオ、ナオは謝る必要は無いの、そもそも悪いのはアイツと、そして、こんな家に生まれた私なんだから・・・」
雪江の悲しみは止まらない。
その時、部屋の引き戸がノックされ、トメがお茶とヨモギ大福を乗せたお盆を持って現れた。
「お話の途中、水を挿してしまってゴメンなさいね」
トメは精一杯の作り笑顔で、お茶とヨモギ大福をテーブルの上に用意する。
立ち上がると、ごゆっくりといい、部屋の入り口に戻ろうとした瞬間、頭を押さえるや足が縺れ、雪江の机の上の便箋やノートをぶちまけて倒れた。
意識を失っている。
「トメさん!」
雪江はうろたえ、抱き起こそうとする。
刹那、こころは雪江の腕を掴み、引き止めると軽く頬を叩き怒鳴った。
「アンタ、こん人ば殺す気ね!」
そして、直子に顔を向けると、
「直子、アンタも何んばしよっと。救急車、早く救急車呼ばんね!」
直子は携帯を取り出し、救急車を呼んだ。
雪江はペタンと座り込むと、何も出来ない自分が悔しいのと、トメさんへの思いが溢れだし、大声で泣き出す。
「トメさん、死んじゃ嫌だよ・・・、私を一人にしないでよ・・・。トメさん~」
ものの二、三分もしないうちに救急車のサイレンが聞こえてきた。
こころは指示を出す。
「直子、玄関行って救急隊員ば誘導して!」
「はい」
直子は玄関に向かって走っていった。
こころは、雪江に声を掛け、
「さっきは叩いて、ゴメンね。大丈夫、トメさんは助かる。稲美さんは、トメさんに付いていくったい。ウチらは鍵ば掛けて、後を追う。それで、よかね?」
雪江は頷き、自身の家の鍵をこころに渡した。
程なく、直子が救急隊員を引き連れ、現れる。
救急隊員達は、ゆっくりトメをタンカに乗せ連れていった。
雪江も急いで後を追う。
部屋には、こころと直子が残った。
「直子、戸締まりと火の始末ば、見て来てくれんね。ウチは部屋を片すばい、 それが終わったら、ウチらも後を追う」
「はい、こころ先輩」
直子はまた駆け出していく。
《さて、ウチも片すね・・・》
そう思って、ノートと便箋を掴んだ時、ヒラヒラと二枚の紙が落ちた。
《ん?何ね?》
こころは紙を拾うと、何気に目を通し、その内容に固まる。
《こ、これは・・・》




