ep.040 オーバーオールとフィギュアスケート
雪江は、どうやら机で何か書き物をしていたようだった。
直子は雪江の服装にかなり驚く、
「服の趣味変わった?ゆっきーは、スカートしか履かない主義じゃなかったっけ?」
今の雪江の服装は、デニムのオーバーオールにロンTといった身体のラインを隠す服装だった。
「趣味が変わったの・・・。ナオ、鷹見先輩、とりあえず、トメさんがお茶を持ってきますから、そこにでも座って下さい」
冷ややかに言い放つと、雪江は座布団がセットされているテーブルを指差した。
直子とこころは、座布団に並んで座る。
キョロキョロとこころが部屋を見回し、ネタを探すと数枚の賞状が目に付いた。
《ん?フィギュアの賞状やなかね。結構いい成績ばい・・・》
「稲美さん、アンタ、フィギュアスケートやってたんね?ウチもスケートもやるとよ。もっとも、こんな身体なんで、スピードスケートしか出来んばい。はははっ」
雪江は、自分を押し殺すようにクールに、
「ええ、中学一年までは母の影響でやってました・・・」
直子は、雪江がフィギュアをしていた事を話してもらってなくて、少し凹んでたが、
「ゆっきー、アタシ、ゆっきーがフィギュアやってたの聞いてないよ」
「ゴメンなさい、わざと黙ってた訳ではないの」
「なら、どうして?」
「話したくなかった・・・」
「え?」
「私ね、中学一年の冬に靭帯を切ってしまったの・・・。医者に言われたわ、日常生活をするには問題ありませんが、フィギュアは無理ですって・・・。目の前が真っ暗になった。そうやって落ち込んでいる時に、二年のクラス替えで、ナオ、あなたと出会った。競技は違っても、コートで汗をかいているナオはカッコよかった」
《ちゃー、薮蛇ったい・・・》
「稲美さん、話難か事聞いて、申し訳なか」
こころは頭を下げた。
「鷹見先輩、お気になさらずに・・・、私がナオに黙っていたのは事実ですから・・・。それで?」
直子がこころと顔を見合わせ、話を切り出した。
「雪江、アタシね、アナタに言わなくちゃいけない事があるの」
雪江は、深くため息を吐き、
「理解っているわ、あの兄の事でしょ?」




