ep.037 請求金額43万円
ランは早々に控室に下がっていった。
ハルナが山崎に近付き肩を叩くと、請求書を見せる。
「お兄さん、悪いんやけど、コレ払ってくれる?」
山崎は、請求書金額を見て愕然とした。
《43万~!俺汗掛いて事態納めようとしているのに、アイツらー》
ハルナは山崎に諭す。
「気を落としてるトコ悪いけど、こんな時でも気前よく払うのが、お兄さんの世界やんな」
岸田の財布には、現金は30万しか入ってなかった。
山崎は自分の財布の中身を確認する。
現金は全部で10万ちょいしかない。
山崎は軽くため息を吐くと、ハルナに頭を下げた。
「スマン、今、40万ちょっとしかない。近いうち、必ず持ってくるから、貸しといてもらえへんか?」
普段のハルナなら断るはずであった。
ところが、自身が飲んでないのに、上役の為に金を払おうとする実直な態度が気に入ったのか、珍しく、
「ええよ。足りない分は、ウチが立て替えとくから、今度、お兄さんが飲みに来て。そん時、返してくれたら、それでええわ。あっ、それから、ウチはハルナな」
ハルナは、現金40万とメモ書きを添え、ボーイに渡す。
スマンと頭を下げ、山崎はジャケットから名刺ケースを出し、自身の名刺を一枚差し出した。
ハルナは、受け取り読みみ上げる。
「河内稲美会、若頭・山崎秀彦。あれ?さっき出ていったアイツらも河内稲美会て言ってけど・・・」
「あれは、ウチの組長と組長補佐や・・・」
「何や、アイツらホンマにヤーサンなんや」
山崎は更に頭を下げた。
「スマン、店に迷惑かけた」
「気にせんでええよ。山崎さんが迷惑かけた訳ではあれへんし・・・」
ハルナは尋ねる。
「ねぇ、山崎さん、柳沢さんって知ってる?柳沢政人さん?」
山崎の目の色が変わり、ハルナの両肩を掴んだ。
「おい、ハルナさん、今、何てった?柳沢政人って言わんかったか?」
ハルナは痛がる。
「ち、ちょっと、ちょっと・・・、痛いって。言うたよ、柳沢政人、アカンの?」
思わず山崎は、ハルナの両肩を離した。
「スマン。それ、いつ知り合いになった?柳沢政人と?」
山崎は必死で問い詰める。
《ホンマ、この山崎ってヤーサン、よく、スマンを連発すんなぁ・・・。まだ、ヤクザやったらマシな方か・・・》
ハルナは、悪意ある聞き方でないのを見抜いたのか、
「友達が今日知り合いになったて言うてたわ、柳沢政人さん」
山崎は膝から崩れ落ち、泣いた。
「くっ・・・。よ、良かった。政さん、生きてた・・・。それ聞いただけでも、この店来て良かった」




