ep.036 ハルナ、キレる。
「あっ、蚊ね!蚊。はははっ」
裕一は、蚊を見て一応納得した様だ。
《このドアホ、次、触ったら、コロす・・・》
ハルナは、引っ叩いた位では納得していない。
裕一は、カッコいいところを見せようとする。
「岸田、シャンパン頼んだれや!ドンペリ!」
ハルナは、とっさにツッコミを入れる。
「もちろん、ピンクだよねー?稲ちゃん?」
酔っ払って調子のいい裕一は、
「おぅ、ピンク2本や!」
ハルナは、冷ややかに裕一を見る。
《こいつ、絶対、アタマ悪いやろ・・・》
岸田が諭す。
「ボン、とりあえず1本で、足りなくなったら追加したら・・・」
本音では、見下している岸田は焦った。
《誰が払うと思ってんねん、このボンクラ。俺やぞ!》
厳密には岸田が払うが、金の出所は河内稲美会が貯めていた金である。
こいつも、勘違い野郎であった。
現在、岸田が組の金庫番なので、そう思うのは仕方ないのだが・・・。
ボーイがドンペリ・ピンクを2本持って来る。
ハルナは手早く1本開け、シャンパンを手早くグラスについでいった。
「はい、稲ちゃん」
受け取るふりをして、裕一はハルナの右胸をまた触り、その上、揉む。
ハルナの中で、ブチンと何かが切れる音がした。
シャンパングラスの中身を裕一の顔にぶちまける。
岸田が慌て、裕一がキレて立ち上がりながら、
「ワレ、俺が河内稲美会の組長や、知って・・・」
それ以上の早さで、ハルナは裕一の正面に立つと、言葉を遮る様に、ハルナが 裕一の顔面真横の壁にドンとハイヒールを突き立てた。
「あー?無茶してるんは、オドレやろ!河内稲美会?はぁ?知らんわ、そんなチンケな組。オドレこそ、この店が天道白虎会の息の掛かった店やって知っとんか!」
岸田の顔色が変わる。
《ヤバい、天道白虎会はアカンやろ・・・》
その時である、慌てふためいた若頭・山崎が駆け込んで来た。
「組長、補佐、大変だっ!若いモン、ヤられました!」
このタイミングだと思った岸田が、慌てている山崎を尻目に裕一に囁く。
「ボン、店変えましょ。ココは来たらアカン店ですわ。エエ女居る店知ってますねん。抱ける店いきましょ」
裕一はニヤリと笑う。
「岸田、最初からそこ連れていけよ」
裕一は立ち上がり、さっさと店を出る。
岸田は、まだ慌てている山崎に趣味の悪い財布を渡し、肩を叩くと裕一を追う。
「これで払っておいてくれ。足らんかったら、立て替えといてんか」
山崎は、唖然として二人を見送った。
《俺、何やってんねんやろ・・・》




