ep.032 酷い仕打ちと二十歳前の女
裕一は、山崎の後頭部を踏み付けていたのだ。
山崎の額がアスファルトを擦り、出血する。
回りが騒ぎだしたので、岸田が裕一を止めに入った。
「ボン、そのへんで勘弁してやって貰えませんか?山崎も反省しているみたいだし、なぁ?山崎」
岸田が笑う。
「すんませんでした、組長」
裕一は屈みこむと、山崎の流血している顔を持ち上げ、臭い息を吐きかけた。
「あー、気分悪い。山崎~、次ヘタ打ったら、指詰めーや。それで堪忍したるわ。お前がヘタ打つのも、楽しみに出来るしのぉ、くくっ」
岸田は冷たい視線を投げかけ、
「山崎、お前は車で待って、頭冷やしとけ・・・」
山崎はうなだれる。
酷い仕打ちであった。
山崎は立ち上がり、裕一と岸田に無言で頭を下げると駐車場に戻って行った。
《あの野郎・・・、いつか・・・》
岸田は、いやらしい笑いを浮かべると、
「ボン、ここはお目当ての店じゃありませんが、下の“シャ・ブラン”にでも行きませんか?意外とボン好みのいい女いるかもしれませんぜ」
裕一は、更にいやらしく笑い。
「そっ、そうだな。ミサトちゃんは次抱けば、いいよな。うん」
裕一の頭の中は、妄想でいっぱいである。
ちなみに、“C'sパール”のキャバ嬢・ミサトの弁護をする訳ではないが、間違ってもその日お持ち帰り出来る事は無いのである・・・。
エレベーターの扉が開き、二人は中に入ると、2階を押した。
チンと無機質な音を立て扉が開く。
こざっぱりしたボーイが、裕一と岸田を出迎える。
頭を深々と下げ、
「“シャ・ブラン”へ、ようこそお越し下さいました。本日は、どの女の子かご指名でしょうか?」
岸田が答える。
「初めてなんで、とりあえず、この店の人気ある女の子を付けてくれ」
岸田は裕一に向くと、
「ボン、これでいいですね?」
裕一は、更にボーイに注文を告げる。
「兄ちゃん、なんぼNo.1でも、23越えてたらイランで。20(はたち)より若い綺麗な女の子で頼むわ」
「かしこまりました。しばらくお待ち下さい」
ボーイは頭を下げ、店の中に消えた。
1分もしない間にボーイが戻ってきて、
「お客さま、お席がご用意出来ましたので、ご案内いたします。こちらへどうぞ」
“シャ・ブラン”の扉が開くと、裕一が進み岸田が続いた。




