ep.031 花束とメンツ
キャバクラ“シャ・ブラン”の入っているビルの前に、河内稲美会・現組長の稲美裕一と組長補佐の岸田一弘、そして、若頭の山崎秀彦が立っている。
「岸田、お前が言ってた“C'sパール”改装で休みじゃねーか、月刊キャバ野郎に書いてたミサトちゃんに逢いたかったのに、どーしてくれるんだ?この花束もよっ!」
「ボン、ホントっすね、“C'sパール”改装のため暫く休みまますって、書いてますね。ははっ・・・。山崎、お前知らんかったんか?」
岸田は、山崎に責任転化した。
山崎は焦ってフォローする。
「組長、補佐~、一昨日来た和田の話だとちゃんとやってるって・・・、ちょっとだけ待って貰えますか?」
山崎は和田に電話した。
「あっ、もしもし、和田?俺だ、山崎だ。お前、一昨日、ミナミで飲んでたよな?何処の店だ?はぁ?それどころじゃない?ざけとんか、コラッ!このボケが!組長が聞いとんじゃ!おぅ、おぅ、理解ったらええねん。で、店、何処やねん。“C'sコーラル”?、“C'sパール”違んか?そっ、そうか・・・、ホナしゃーないな。ほんで、さっきのそれどころやない件って、何やねん?ヤヤこしい?了解った30分後に、もっかい電話するわ・・・」
山崎が軽くため息を吐き、申し訳なさそうに、
「組長、申し訳ありません。アッシが勘違いしていたみたいで・・・」
山崎は、深々と頭を下げる。
本来なら許してもらえるハズだった。
だが、花束まで買って意気揚々としていた裕一は、許さない。
今夜、彼の心の中では、“C'sパール”のミサトを抱く予定になっていたからだ・・・。
裕一は顔を真っ赤にし、持っていた花束で山崎を殴り付けた。
「山崎ぃ、おどら、舐めとんか!お前のお陰で、ミサトちゃんに会われへんがなっ、どないしてくれんねん!あ~?」
そう言いながらも、顔面の左右を、まだ花束で殴り続けている。
岸田は自分に火の粉が飛んでこないと判断すると、ニヤニヤしてその状況を眺めていた。
山崎は、土下座して詫びを入れる。
「本当にすいませんでした、組長」
鈍い音と共に、目の前が暗くなると激痛が走った。




