ep.028 やって来た《超》最終秘密兵器
完全に笑顔になった直子を確認し、こころは自身の背中を指差す。
「直子、早く乗らんね」
「はい、こころ先輩」
こころは、V-maxに火を入れると、直子の自宅を目指した。
直子の家でのこころへの歓迎振りは凄かった。
元々、直子の母・真弓がバレーボールをやっていたのがきっかけで、始めた直子である。
その直子が、全日本女子バレーの“柳岡ジャパンの《超》最終秘密兵器”と称される“鷹見こころ”を連れてきたのだから・・・。
真弓は最初に家の前に停まったV-maxのエンジン音を聞くなり、娘に不良の彼氏が出来たかと思ったらしく、文句を言ってやろうと作りかけのカレーを混ぜていたお玉杓子を持ち玄関先に向かった。
その矢先、玄関の扉が開き、満面の笑顔の直子と、長身の美少年と見間違われるこころが入ってきた。
真弓は、思わず持っていたお玉杓子をカタンと落とし、亭主を呼んだ。
「アナタぁ~、大変、ちょっと来て~~!」
どうした?と、この家の主、鈴木正と直子の弟・翔が顔を覗かせる。
正も大のスポーツ好きなので、一目でこころの正体を見抜き固まった。
理解らないのは翔だけである。
「めっちゃデッカイおねーちゃん」
その一言が緊張した場を壊した。
全員から、笑みが零れる。
直子が、こころを家族に紹介した。
「パパ、ママ、翔、こちら、聖クリの鷹見こころ先輩」
面と向かって紹介されると意外と照れるもので、
「う、ウチ、鷹見こころと言います。はじめまして」
と礼儀正しく頭を下げた。
直子の両親は、こころに是非食事でもと誘ったが、今回ばかりは丁寧に断る。
《あー、惜しかねぇ、絶対、直子のお母さんのカレー美味しかよ・・・、かなり、残念と》
そして、バレー部の急な合宿をする事になったので、娘さんを月曜日の夜まで借りますと述べた。
もちろん、こころの申し出なので、両親は断る事もなく、どーぞどーぞと賛同する。
《ありがたか・・・》
「じゃあ、直子ちゃん、お借りします」
と頭を下げた時である。
「ちょっとだけ待ってて」
そう言い残し、真弓が台所に消えた。




