ep.025 駐車場での闘い
こころと直子がウェイトレスのマリに謝辞を述べ、“ル・スリィール”を後にした。
マリが店を出る前にこころの怒りのオーラを感じたのか、無茶はするなと釘を注す。
《さすが先輩ったいね。お見通しばい・・・》
こころは、手を振り答えた。
丁度、こころと直子が、店の階段を降りてバイクに向かおうとした時に、一台の黒のフルスモークのトヨタ・マークXが入って来た。
直子はマークXを見ると固くなり、そして、降りてきた男三人組を見るなり、あっと声を出し指差した。
「何ね、直子」
「あの男達です、アタシ達を拉致したの!」
直子の声に気付いた男の一人が、すぐさまマークXに戻る。
残りの男達が急いで戻ろうとした時、こころが二人の間に手を伸ばし割って入る。
「待たんね。お前らか、ウチの後輩にしょーもない事した輩は!」
こころが指をポキポキ鳴らし、
「話聞かしてもらおうか」
男の一人がこころを指差し、
「なんやこのデカい・・・。ぐはっ・・・」
男は全てを言い終わる事はなかった。
電光石火の早さでこころは動くと、指差している腕を左手で掴み、右肘で鳩尾に渾身のエルボーを叩き込む。
次に、男の腕の付け根を右手で掴みマークXに投げ付けた。
投げられた男は、後部座席のガラスを自分の顔面で叩き割り、上半身が車の中にすっぽり収まる。
そして、足が一度ビクンと延びると動かなくなった。
逃げそこねたもうひとりの男が、ナイフを取り出し、叫ぶ。
「どけやオンナ!」
刹那、マークXがこころ目掛けてつっこんで来た。
こころは半歩下がり身をかわす。
男は慌ててその隙に助手席に乗り込むと、デカいの殺っちまえと指示した。
《おもしろい・・・》
思わずこころの口元から、笑みが零れる。
マークXが、再度、こころに向かい加速した瞬間、絶妙のタイミングでボンネットに飛び乗ると、嫌な音を立てて金属が凹んだ。
こころを振り払う為、男が車を左右に振る。
こころは右の指を車の天井の縁に掛け、ヒラリと身を天井に移した。
助手席の男が半身をマークXから出し、ナイフで切り付けてくる。




