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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
三年後
242/243

ep.242 ひとめ、あなたに

「ば、馬鹿だよ。あんた・・・、雪江。嫁入り前の綺麗な背中、傷物にしちまって・・・」

トメは号泣するが、その表情は複雑だ。

雪江は振り向き、真剣な眼差しで、

「アタシは、伝説の博徒“朱雀のトメ”と先々代河内稲美会・組長“青龍の幸成”の孫。だから、組はもちろんだけど、トメ祖母ちゃんの朱雀も背負っていきたいの。だから、背中の朱雀は傷物なんかじゃなく、アタシとトメ祖母ちゃんの大事な絆。ダメかな?」

「ダメって、あんた・・・」

トメは戸惑いを隠せない。

扉越しに政が、

「トメ祖母ちゃん。雪江の気持ち、受け取ってやって貰えませんか?俺、雪江が理由(わけ)ちゃんと言ってくれたから、墨入れるの反対しませんでした」

トメは涙をハンカチで拭き、納得いったのか、

「ありがとう。雪江、そして、政」

トメは、扉の向こうで政が、少しはにかみ頷いてるのが見える気がした。


雪江は下着を着け、脱いだジーンズとセーターを着直す。

更に、掛けてある白無垢に袖を通し、トメに向かって正座した。

深呼吸して、深々と頭を下げながら、

「トメ祖母ちゃん、今までお世話になりました。明日、アタシは政さんのお嫁さんになります。こうしてお嫁入り出来るのも、亡くなった父さん、母さん、そして、ずっと支えてくれてたトメ祖母ちゃんのおかげです。ありがとうございました」

トメはしみじみと、

《小雪・・・、あんたの産んだ娘は、ほんと綺麗になった・・・。一目見せてやりたかったね・・・》

「雪江。勿体ない言葉、ありがとう。天国の先代、先々代も喜んでくれるよ」

トメは、またハンカチで目頭を押さえながら、

「政さん、入ってきてくれるかい」

引き戸が開き、待っていた政が部屋に入って来る。

静かに雪江の横に正座した。

トメは深々と頭を下げ、

「政さん。到らない処もある娘ですが、添い遂げてやって下さい。宜しくお願いします」

政はトメの手を取り、体を起こさせると、

「この政、我が身に代えても雪江お嬢さんの事、お守りしていきますから。ご安心下さい、トメ祖母ちゃん」

政は場を和ませる為に、にっこり笑い、

「もっとも、正確には雪江の嫁入りじゃなくて、この俺、柳沢政人の婿入りなんですけどね。だから、俺がお二人に、お世話になりますと言わなきゃなんねぇ」

雪江とトメは顔を見合わせ、“ぷっ”と吹くと、確かにそうだと笑いあった。

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