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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
一年後
240/243

ep.240 Bless

半年程前に小樽市中心街より少し外れた国道5号沿いに、その喫茶店はオープンしていた。

店の名前は“Bless”。

具だくさんだが少し甘口なカレーと美味しいコーヒーが自慢で、優しい目をした小柄なママが、マスコット的な小さな可愛い女の子と二人で営む店である。

そんな“Bless”の駐車場に和泉ナンバーの黒のレクサスが停まった。

秀はサングラスを外すと、

「裕一さん、ここからはお一人でお店の中に行って下さい」

「あれ?秀ちゃんは行かないの?」

裕一は不思議そうな顔をするが、納得いったのか、

「分かった。一人で行くよ」

車を降り、リュックサックを背負うと、

「今まで、ありがとう。秀ちゃん。バイバイ」

頭を下げ、小さく手を振ると店に向かって歩き方だした。

残された秀は、裕一を見送るとマルボロを取り出す。

火を着け、深く吸い込んだ。

思わず涙ぐむ。

《良かったですね、裕一さん。今度こそ幸せになって下さい・・・》

ハンカチで涙を拭くと、シフトをリバースに入れ愛車を反転させた。

目指すのは札幌。

《まぁ、帰りのフェリーが23時半やから、充分、札幌行って、千絵に頼まれてる“ロイズ”の生チョコ買えるやろ・・・》

役目を終えたレクサスは、軽快に走り出した。


カランコロン。

涼しげな音を立てて、カフェ“Bless”の扉が開く、

「いらっしゃ・・・」

途中まで言いかけて、思わず恵美は固まる。

あのヒトが立っていた。

「恵美ちゃん、ボク来たよ!」

裕一は涼しく笑う。

「裕一・さ・・・ん」

恵美のその言葉に、隅のテーブルでお絵かきをしていた優も、反応し顔を上げた。

目をびっくりして、目を真ん丸に見開き、

「あっ、パパ!」

椅子から降りると、裕一に駆け寄った。

脚に抱き着くと、

「パパ、“おたる”きてくれて、ありがと!」

優は殊の外嬉しそうだ。

恵美は、ハンカチで涙を拭き、

「裕一さん、お腹空いたでしょ?モーニング食べませんか?」

「うん!食べる」

「あたしもたべる!」

優の元気な声が、店内に響く。

裕一は笑った。

さまよい、求めあった思いが、やっと一つに・・・。

小樽に本当の春がやって来る。

丁度、雪江が組長代理を襲名してから、一年後の出来事であった。

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