ep.233 嫁は自分で探す
一人黙々と刺身をパクついていた鉄が、話しの腰を折り、
「やっぱり鯛は、明石の天然物の奴やなぁ。美味いわ。で、JJ。稲美の嬢ちゃん、どーすんねん?退学届け、受け取るんか?」
JJは、ため息を吐き、
「個人的には、辞める必要ハ無いと思うのサ。ボクは、彼女に提案しようト思ってるノ、休学デいんじゃないカ?ってネ。桜子ちゃんも、休学にしてくれって依頼してきたしサ」
厳之介が、ちょっと申し訳なさそうに、
「出来たら、そうしてやってもらえんか。純ちゃん」
「珍しいネ。じーちゃんが、ボクに頼み事なんてサ」
「いやな。このままどっぷりと極道の世界はな・・・。昔、あの嬢ちゃんに教えてもらったからよ・・・」
鉄は肩をすくめ、
「そん時、俺には『学校なんざ辞めてしまえ!』って、怒ってたのになぁ。変わるもんや。ほんで、じーちゃん。柳沢はどーすんねん?」
厳之介は、咳ばらいを一つして、
「半年程、羽出の親分の元で、組長の修行をしてもらおうかな、とな・・・」
鉄は吸い物をすすり、
「仏の羽出さんとこか。大分の別府やな」
「じゃあ、その修行の間ダケ、休んでもらうヨ。上手くいけバ、留年モしないサ」
厳之介が、左眉を上げて不適に笑い、
「そういや、純ちゃん。今回決裂したら、あいつら使って介入するつもりだったんだろ?しかも、二回も」
JJは、口直しに緑茶をすすると、
「そりゃそーサ。その為の《ケルベロス》だヨ、じーちゃん。マダ、この離れを中心として、半径300メートルで警備体制を取ってるサ」
厳之介は、そんな明け透けに物を言うJJが大好きな様で、
「誰か一人呼び出して、人数分差し入れ持って帰ってもらってくれや、純ちゃん」
「《ケルベロス》に?じーちゃん、いいの?あいつら喜ぶサ」
「それから、純ちゃん。婿入りする気ねーか?今、直参の組で年頃の娘が三人程いるんだが、婿探してくれって五月蝿えんだよ。真ちゃんもどうだい?」
真は即答で、
「断る。嫁は自分で探す」
JJも困った顔をして、
「ボクも、真と同じ主義サ」
厳之介は肩を落とし、
「あー、また直参から文句言われるわい・・・。とほほ・・・」




