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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
一週間後
226/243

ep.226 朱雀の恋唄

浅井が思い出したように、

「のう、稲美の姐御?」

雪江は微笑み、

「はい、浅井の親分。何でしょう?」

「挨拶代わりに、一曲歌ってやってもらえへんかのう?儂ゃ、歌が好きなんや。あかんか?」

大広間には、いつの間にか行儀見習いの若い衆により、カラオケセットが用意されていた。

雪江は頷き、

「アタシの下手な歌でよければ・・・」

浅井は、くしゃくしゃに笑って嬉しそうに、

「ええんや、ええんや。歌は気持ちや」

雪江はスタンドマイクの前に立ち、ペこりと頭を下げ、

「親分衆のお耳汚しにならなければいいんですが・・・、それでは、昔、母がよく歌っていた(くれない)かおるさんの曲で“朱雀の恋唄”」

大広間に拍手が起こった。

静かに物悲しく、胸を締め付けるメロディーが流れる。

「胸に秘めた、あんたへの想い・・・」

雪江は歌う、母を思い出しながら・・・。


雪江が歌い終わると、浅井はボロボロに泣きながら、手を叩き、

「稲美の嬢ちゃん、あ、すまん、姐御やったな。儂、感動したわ。歌上手いやないか」

そう言って、雪江の手を握りしめた。

「もう一曲、もう一曲や。かまへんな、親分がた?」

親分衆は頷いた。

雪江は少し照れ、

「それじゃもう一曲だけ・・・」

元々、フィギュアスケートで注目されたりしているので、人前は嫌いではない。

雪江はペこりと頭を下げ、

「今度は八代亜紀さんの曲で、“舟歌”を・・・。聞いて下さい」


雪江が歌い終わると、波の様な拍手が起こった。

歌好きな親分達が、次々と順を争いマイクを奪い合う。

長門の番になり、気持ち良く鳥羽一郎の“兄弟船”を歌い、まさに一番いい所に差し掛かった時引き戸が開いた。

行儀見習いの若い衆が、礼をして入ると雪江の所にやって来て、耳元で囁く。

「稲美の姐御、総会長(おやじ)さんがお呼びです。至急、別室へ」

雪江は、周りにいる親分衆に詫びを入れ、立ち上がる。

歌っている途中ではあるが、長門は歌を切り、

「おい、なんだよぉ。雪江ちゃん、行っちまうのかよ~。せっかくこっからが聞かせ所なのによぉ」

かなり悔しそうだ。

雪江は手をあわせ、

総会長(おやじ)さんから、呼ばれてるの。今度、ゆっくり静岡行って聞くから。ごめん、とっちゃん。あっ、長門の親分・・・」

どっと笑いが起こり、他の親分衆が、茶化す。

「許してやれ、とっちゃん」

総会長(おやじ)さんじゃ、しょうがねーよ。とっちゃん」

長門は、とっちゃんって言うんじゃねーと、照れて吠える。

雪江は目を細め、長門が親分衆から愛されているんだと実感した。

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