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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
三日目
215/243

ep.215 塩っ辛いカレーパン

「ほな行こか」

鉄は政に声を掛ける。

政は桜子達に深々と頭を下げると、鉄について行こうとした瞬間、

「ま、待って!」

雪江が警官を振りほどき、走って政の背中に(すが)り付く。

警官が引き離そうとするのを、鉄が制し、

「5分だけやで」

「すんません・・・」

政は鉄に頭を下げた。

雪江は背中で泣いている。

政は、上を向き深呼吸すると、

「雪江お嬢さん、頼みがあります」

雪江は俯いた顔を上げ、

「え?」

背中越しに伝える。

「俺が帰って来るまでの間、代わりに、“稲美会”、護ってやってもらえませんか。いや、“稲美会”だけじゃねえ。先代、先々代が護ってきた街を秀達と一緒に」

政は、向き直ると雪江を抱きしめ、

「頼みます。纏めれるのは、雪江お嬢さん、あんたしかいねえ。それで、俺が帰ったら・・・」

全てを言わなくても、雪江は理解(わか)っていた。

「はい、待ちます。政さん・・・」

政は雪江を身体から引き離し、精一杯の作り笑顔で、

「ありがたい・・・」

そう言って雪江に頭を下げ、振り返る。

「すんません。お待たせしました」

鉄は、おうと言い歩きだす。

政も、後を静かに追う。

「政さん!」

たまらず、涙目の秀が、政を追いかけようとした。

刹那、口元を引き締めた雪江が手で制する。

もう泣き顔では無かった。

「いい加減にしないか、秀。あの人に恥かかすんじゃない」

そこには、高校の制服を着てはいるが、政と一緒に組を継ぐ決意をした“河内稲美会”姐の姿が。

秀は、思わず生まれ持った雪江の威厳に触れ、

「すんません、姐さん」

自然と口に出た。

政は振り返る事は無かったが、安心したのか口元を少しだけ綻ばせる。


鉄は、ハマーの後部席に政を乗せ、助手席にあった紙袋を渡す。

「美味いぞ、食え」

エンジンが咆哮し、ハマーは走り出した。

流れる街並みを眺めながら、政は紙袋からカレーパンを取り出し、頬張る。

「鉄さん、このカレーパン塩っ辛いんすね」

「あぁ、でも美味いやろ?幸せの味や。政、いや、“青龍の政”と言った方がええかなぁ。ホンマの事言うて、早くあの嬢ちゃんの元に帰ったりや」

「はい・・・」

政は、只々鉄に頭を下げるしかなかった。

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