ep.208 雪江の決意
雪江は口元を引き締め、覚悟を決めたのか、
「了解りました。恵美さんと優ちゃんは、兄さんの言葉通りサポートさせて貰います」
裕一は安心したのか、淋しく笑い、
「これで心置きなく壊して貰える。鷲尾さん、僕を壊したら、警察に突き出して下さい。さぁ、頼みます」
桜子は裕一の目の前に立つと、静かに目を閉じる。
“カッ”と見開き裕一を固まらせ、耳元で囁いた。
裕一はそのまま倒れ、動かなくなった。
雪江は駆け寄り、裕一を起こす。
自然と言葉が出た。
「兄さん・・・」
桜子は雪江に囁く。
「人格を小学生に戻し、そのまま成長出来ないようにしたわ。安心して、今は眠っているだけ。雪江ちゃん、アナタの嫌な記憶だけを、消す事も出来るけど・・・」
雪江は首を横に振り、
「いいえ、桜子先輩。アタシは、この傷を背負って生きていきます。それが“稲美会”を継ぐ覚悟だと思うから・・・」
「そう・・・」
刹那、桜子は雪江を魅入る。
目を閉じた雪江に、一言だけ囁いた。
雪江は、瞬間的に意識を戻し、
「あれ?桜子先輩、アタシに何かしました?」
桜子はにっこり微笑み、
「いいえ、何にも」
桜子は振り返り、指示を出す。
「こころ、鉄さんに連絡を取って。河内稲美会元会長・稲美裕一が自首するからって。その方が罪は軽いわ。罪状はおそらく、薬物だけで済むと思うし」
こころは頷き、
「よかよ。直ぐに連絡入れると!」
「それから、ローズィー。雪江ちゃんのお兄さんが目覚めたら、車に乗せ大阪府警本部へ連れて行って。そうね、こころ、アナタも同行して。それから、藍も。万が一、麻薬の影響が出たら、“晴明”で抑えて。いい?」
「Yes, Mom!」
「あいっ」
今度は皐月に目を向けると、
「皐月、ここに残って、恵美さんと優ちゃん、そして、直子ちゃんのフォローをお願い。トメさんも、お願い出来ますか?」
皐月は頷き、
「了解。リーダー」
トメも頷き、
「とりあえず、優ちゃんにご飯作って、皆さんが戻るの待ってるよ」
桜子は、トメさんと秀に尋ねる。
「それから、山崎さん、トメさん。政さんの行きそうな場所に心当たりは?」
トメは秀を見て、
「岸田の所かねぇ・・・」
「だとしたら、堺だ」
桜子は、ふむといった面持ちで、
「山崎さん、案内して下さい。雪江ちゃん、一緒について行って。出来るわね?彼を止めれるのは、アナタだけだわ」




