ep.203 裕一の孤独と立っていたのは・・・
裕一は、手紙を読み終え、写真とヌイグルミを抱きしめ、
「ま、ママっ!ぼ、僕は、僕は・・・。うわぁあ~~~ん」
ボロボロに泣き崩れる。
裕一の脳裏に、優しかった母親の面影が鮮明に甦った。
トメは諭す様に、
「いいかい裕一、先代はね、冴子さんが亡くなってから、孤児院へ入れられるあんたを不憫に思い、姐さんと相談して引き取る事を決めたのさ。もっとも、お前さんの真実の父親への義理も重く感じてたから、あんたがちゃんと成長してたら、真実を語り雪江を嫁にやるつもりだったのに・・・。あんたは馬鹿だよ、麻薬なんか手を出して・・・。自分で自分の未来、壊してしまった。何故、麻薬なんかに手を?」
裕一は、ぽつりぽつり語り始めようとするが、身体が痙攣すると顔つきが狂暴に・・・。
桜子が、藍に目配せをすると、
「しょーがないのぉ。また、尻を愛でたいときには、触らしてもらうとするか・・・」
そう言い放つと、目線を裕一に持って行き、藍は呪詛を放ちながら幾つかの印を結ぶ。
「“縫影”、カーーーッ!」
更にまた印を結び、
「“抑心”、カーーーッ!」
それを見ていたベスは、軽く首を傾げ、
《これって、藍が本当にやっているのかしら?藍が魔術?を勉強しているの、全く見た事が無いのよね・・・》
ようやく落ち着きを取り戻した裕一は、
「淋しかったんだ・・・。いつも始めは親しく近付いて来るのに、実家がヤクザだと判明ると、手の平を反した様に去っていく。そうやって、沢山の友達と思ってた奴らが、消えていった。残ったのは、僕の立場を利用しようとする奴らばっかりで・・・。だから、人が信じられなかった。ずっと、孤独だった。そして、大好きになった女の子も・・・、真実を話すと僕の前から消えた・・・」
裕一はうっすらと涙を浮かべると、肩を落としため息を吐いた。
「それは違うわ!」
リビングの入口から声がする。
部屋にいる全員が、一勢に声の方を向く。
そこには、髪をショートカットにした皐月と、幼い少女の手を引いた若い女が立っていた。




