ep.202 冴子ママから、愛しい裕一へ
愛しい裕一へ
この手紙を読んでる貴方は、幾つになっているのかな?
もう大人になってお嫁さんでももらっているのかな。
もし、高校生ぐらいでこの手紙を見つけていたら、それはそれでママは嬉しいかも・・・。
今、ママはこの手紙を、雪山の見える病室で書いています。
真っ白な雪がキラキラ光って、汚れていない貴方の心のようです。
裕一が良い子に育つといいな。
きっと貴方はすくすく育ち、立派な人になってるに決まってると、ママは信じています。
ううん、立派にならなくなんていい。
元気で居てくれたら、それだけでママは幸せです。
だって裕一、貴方は、私と裕太郎さんの大事な大事な宝物だから・・・。
本当に生まれてきてありがとう。
でも裕一、これから寂しい思いをさせてごめんなさい。
あなたのパパは、この前天国へ召されました。
事故だったらしいです・・・。
でもね、あなたのパパは、すごく強くて義侠心を持った優しい人で、ママだけを愛してくれました。
パパに愛された事は、ママにとって誇りです。
もちろん、生まれてきた裕一、貴方も。
裕一、ママは貴方を残して居なくなるけど許してね。
今、ママは、白血病という病気にかかっています。
血の癌らしいです。
お薬を飲んでたら、直る事もあるらしいけど・・・。
ママの場合は、身体のあちこちにも転移してるって、昨日、先生に説明を受けました。
後、一ヶ月だって・・・。
もっともっと、裕一、貴方と過ごしたかった。
幼稚園の入学式、小学校の夏休み、反抗期の中学校、もっともっと・・・。
歳を取って、ある日、貴方が私の前に可愛い女の子を連れて現れ、きっとこう言うの、『母さん、俺、この娘と結婚する』って。
いずれ、その娘との間に子供が出来て、私はおばあちゃんになるんだわ。
そうやって、命って繋がっていくのが本当なのに・・・。
でも、裕一、こんなママを許してね。
淋しい思いをさせるけど、許してね。
ママは、もうすぐこの世から消えてしまうけど、ずっとずっとずっと貴方を星になって見守っているから。
愛しています。
思いを込めて。
冴子




