ep.201 ヌイグルミの真実
「あたしゃね、情けないよ。先代がどんな思いでアンタを育て、組を継がせようとしたのか、全く理解っちゃいない・・・。馬鹿だよ、アンタ・・・。大馬鹿もんだよ」
そう言って、うわーんと泣き崩れた。
「ごめんなさい・・・、トメさん」
裕一は俯き、只々謝るしかない。
雪江がトメの肩を抱くが、トメはそれを振りほどき、
「あたしゃ、悔しいよ。裕一と雪江の間に、そんな悲しい事が起こっていたのを気付けやしなかったなんて・・・。あたしゃ、墓前で何て謝りゃ・・・」
その時、桜子がベスから鞄を受け取り、中からクマのヌイグルミを取り出した。
裕一は驚く、
「そ、それは・・・」
あの裕一の部屋にあった“ヌイグルミ”である。
トメに近付き、ヌイグルミを差し出した。
トメがたいそう驚き、
「これは・・・!」
桜子は、優しい声でトメに語りかけた。
「トメさん。このヌイグルミの真実を、語って頂けませんか?今となっては、アナタだけが知っている真実を・・・。この写真と手紙についても・・・」
そう言って、ヌイグルミから筒に入った写真と手紙を取り出す。
トメは涙を拭き、
「時が来れば、語ろうと思っちゃあいたけど・・・、今がその時なのかねぇ」
深呼吸すると、
「裕一、雪江、あんた達は本当の兄妹じゃない。」
裕一と雪江が、雷にでも打たれかの如く固まり、
「え?」
「と、トメさん・・・。それって、アタシは?」
トメはハンカチを取り出し、鼻をすすると、
「ああ、そうさね。あんた達ゃ、腹違いでもない、本当は全くの他人だよ・・・。裕一は、先代と“河内稲美会”の跡目を争った金剛裕太郎って兄貴分の落とし種さ。このぬいぐるみはね・・・、裕一、病気がちだったあんたの本当の母親が・・・。確か冴子さんって言ったかねぇ・・・、命が長くないのを悟ったのかねぇ、泣き虫で、気弱だったあんたを諭す為に、作ったヌイグルミだよ。だから、裕一、あんたはこのヌイグルミをずっと手放さなかったのさ。亡くなった姐さんや、あたしゃ、いつ話そうか、ずっと機会を待ってたのに・・・。読んでごらん」
そう言って、トメは写真と手紙を裕一に差し出した。




