ep.002 遺書(2枚目)
そんな私にあなたは、「なあーんだ、ちゃんと笑えるじゃない。雪江、笑った方が絶対かわいいよ」って言ってくれたよね。
直子、その日から私の世界が変わったよ。
凄く、私、嬉しかった。
初めての、そして、多分最後の友達・・・。
あなたさえいてくれたら、何もいらなかった。
あなたがいてくれたから、どんな事にも耐えられた。
もし、よりによってあなたがあいつに目を付けられた時は、私は死んでも直子を守る!そう誓ったの。
でも、あなたが私を家まで迎えに来てくれた時、折り悪くあいつがいた。
あなたは丁寧にあいつに挨拶してくれた。
その時のあいつの目を見て、私はぞっとしたの。
そして、当たって欲しくない予感は、当たってしまった。
信じられなかった。
あいつは下品に笑うと、あなたを犯したいって言い出したのよ。
しかも、私に手伝えって。
直子、信じて欲しい、私はそれをキッパリとはねつけた事。
私が断ったから、あの日、学校の帰り、いつもの抜け道入った時に、私達は突然知らない男達に拉致され、あなたの目の前で私は凌辱の限りを尽くされた。
あなたも身体の自由を奪われ、その一部始終を見る事を強要された。
そして、事が終わると私達は縛られたまま近所の空き地に捨てられた。
そこに、普段は歩いて移動する事などないあいつが通り掛かった。
縛られてボロボロになった私達を見て、あいつは大騒ぎすると顔のきく病院へ連れて行った。
警察を呼んだりする事もなく。
家業が家業とはいえ、拉致、監禁、暴行されたのにだよ。
おかしいよ・・・。
無傷だったから、私より先に夜間待合室にいたあなたに、あいつは静かな口調で脅していた。
検査を終えた私は、物影に隠れてそれを聞いていたの。
あの身も毛もよだつ会話を。
あなたは俯いて、自分の潔白を証明しようとしていたね。
当たり前よ、あなたが私にそんな事を仕掛けるわけないもの。
それでも、あいつはあなたを悪者にしようとした。
私はそれが許せなかった。
あいつがテーブルをどんと叩くと、あなたはとうとう泣き出した。
私もすごく苦しかった。
そして、あいつは急に気持ちが悪いくらいの優しい声を出すと、メモを渡したね。
あいつとの会話のやり取りと雰囲気で、想像は出来ました。
聞こえたのは、堺インペリアルホテル。
あいつがいつも悪巧みに使うホテル。
あなたをそんな目にあわせるわけには、いかない・・・。
この家が寝静まったら、私はこの手紙をポストに投函します。
そして、実の妹である私を弄び続けただけでは飽き足らず、チンピラを使ってまで奸計を巡らし、きれいなあなたを汚そうとした畜生以下の男と、その血を受けたが為に取り返しのつかない程汚れてしまった自分の身体に油を蒔いて、この呪われた家と一緒に燃やします。
直子、決してあなたのせいじゃないから。
それだけは分かって、お願い。
私は自分の呪われた運命を、自分で精算するだけなんだから・・・。
あなたに会えて本当に幸せでした。
ありがとう。
雪江
追伸、こんな私だけど、生まれ変わっても、また仲良くしてくれるかな?