ep.199 もっと後悔させてあげるわ
藍は身体を一度ビクンとさせると、直ぐにしゃがれ声で、
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。まぁ、嬢ちゃんの頼みなら、聞いてやらんわけには参らんかのぉ」
藍の返事に頷き、直ぐさま桜子が、こころに指示を出す。
「こころ。とりあえず、目隠しと猿ぐつわを外してやって」
こころが、裕一の目隠しを最初に外す。
すると裕一が、狂暴な目付きで桜子達を睨んだ。
桜子と目が合う。
《ふーん、一応睨んだりは出来るんだ》
こころが次に、猿ぐつわを外した。
裕一がいきなり吠えた。
「オドレら誰や?俺にこんな事して、ただで済むと思うなよ!」
桜子は、冷ややかな視線を裕一に投げ、
「あら、口答えする勇気は在るのね。いいわ、壊される前に教えてあげる。アタシは、鷲尾桜子。妹さんの学校の先輩」
裕一は奥歯をギリっと噛み締め、
「はぁ?雪江のヤツ、チクりよったんけ?」
桜子は、こころに目配せし、
「この馬鹿兄貴に、身体で理解らせる必要があるみたいね。構わないわ、手も解いてやって」
「ホントによかと?」
こころは、念を押した。
桜子は頷く。
しかたないと言った面持ちで、こころは裕一の手を解いた。
刹那、裕一が汚い言葉を吐き、桜子に飛び掛かる。
が、直ぐさまソファーに吹っ飛ばされた。
いつの間にか桜子は、愛用の鉄扇を右手に持っている。
裕一の左頬、右手首に痣が、そして、鳩尾を抑え、
「オドレ、何しやがった!」
桜子は、軽くため息を吐く。
「全然、相手にならないわね。コレは要らないわ。瑠奈持ってて」
そう言って、鉄扇を瑠奈に投げた。
瑠奈が受け取ったのを確認し、桜子は左人差し指でかかってこいとポーズを取る。
「このアマ、ナメやがって!犯すぞ、コラ!」
裕一は、絶対に言ってはいけない一言を言ってしまった。
ぷちん、桜子の中で何かが弾けた。
ヤバい・・・、暴走が始まる・・・。
桜子は、踏み込むと裕一の鼻に正拳突きを放つ。
嫌な音がして鼻が潰れ、裕一の身体はソファーに張り付く。
逃げ場の無い裕一に、桜子の左右の拳が激しい嵐の様に降り注いだ。
見る見る裕一の顔が、腫れる。
思わずこころが止めに入った。
「桜子、肉体的にはそんなモンでよかよ」
桜子は、虫けら以下の視線を裕一に投げかけると、深呼吸をし、
「今からもっと後悔させてあげるわ」