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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
三日目
197/243

ep.197 鉄火なトメと礼司ちゃん

《さて、どうにかこうにか着いたよ・・・》

トメは近畿日本鉄道吉野線・吉野駅を出ると、バス停のベンチに座り込み考えていた。

病院から誰もいない稲美邸に戻ると、大事に取ってあった秀の結婚招待状を探し、それを元になんとか奈良・吉野までやって来たのだ。


「あっれ~、トメさんじゃないっすか。どうしてこんな所に?」

目の前に、パンパンに詰まったスーパーの買い物袋を両手に持った礼司が、趣味の悪い紫のスエットの上下を着て立っていたのだ。

「れっ、礼司ちゃん・・・。ま、政が、政が・・・」

トメの瞳から涙がこぼれる。

礼司はスーパーの袋を落とし、トメに駆け寄った。

会長(おやじ)がどうかしたんで?」

トメは礼司に縋り付くと、うわーんと泣き出す。

ずっと我慢していたのだ。

礼司は暫く胸を貸し、トメが落ち着くのを待つ。

5分程過ぎた頃、やっとトメは気持ちの整理が着いたのか、鼻をかむと、

「礼司ちゃん、私を直ぐに秀の所に連れていっておくれ」

すると礼司は、申し訳なさそうに頭を掻き、

「すんません、トメさん。実は秀の兄貴からは、食料費とバス代しか預かってないんすよ」

礼司はバスの時刻表を確認し、

「うわっ、後30分も待たないと・・・。どうします?トメさん。急ぐには、タクシーがいいんすけど・・・」

トメは、ポーンと礼司の肩を叩き、

「礼司ちゃん、あんた素直だねぇ。いい若い衆になるよ。事は急ぐんだ。タクシーで行くよ。私が出すから」

礼司は、褒めてもらったのが嬉しいらしく、

「はい、トメさん。お供します」

そう言うと、大量の食料と一緒に、トメのハンドバッグも持って、タクシー乗り場に歩きだす。

トメも見知った顔を見て安心したのか、腰を上げ礼司の後を追った。

礼司は歩きながら、ふと首を傾げ、

《しっかし、政の親父や秀の兄貴が呼びすての、“政”や“秀”なのに、何で俺は“礼司”じゃなく“礼司ちゃん”なんだろ?確かに、トメさんから見たら、孫位の年齢かも知れないけど・・・》

まずトメをタクシーに乗せ、礼司自身も乗り込むと行き先を告げる。

「すんません、金輪王寺の旅館街まで」

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