ep.196 ウチも出来るとよ
こころは、ちらりと仲間を見て、
「そうと?」
ベスも頷いた。
「なら、よかとよ」
こころも、どうやら納得し、へへっと笑った。
桜子が手を叩き、場を仕切り直す。
「いい、皆んな?」
メンバー全員、息を飲み頷く。
「今から富田森の稲美邸へ行って、そこでこの禍々しく忌まわしい関係を全て清算する。改めて聞いてほしいけど、今から言うのは、あくまでもアタシの私論ね。雪江ちゃんの実家のヤクザの組がどうなろうと、アタシは知ったこっちゃない。アタシは、アタシの可愛い後輩を、護る為だけに闘う。ただそれだけ。邪魔する奴は、全力で排除する」
メンバー全員頷き、
真っ先に瑠奈が、
「同じ思ぃだょ、桜子ちゃん」
そう言って右手を差し出す。
「アタシもね・・・、確かにその為には、全てを破壊してもいい」
黒い風を身に纏い、ベスも右手を重ねた。
更にその上にローズも右手を重ね、
「It's time for close. (幕引きの時間ね)」
藍も右手を重ね、
「悪さした男はんには、それなりに後悔して終わってもらいませんと」
いつになく口調が怖い。
「決着つけるとよ、桜子」
そう言って右手を置いたこころの上に、桜子も右手、更に左手も重ね。
「これは今こっちに向かっている皐月の分。じゃあ、気合い入れてくよ!はねくみぃ!」
『ファイッ!』
ドンと左足を踏み込み、組んだ手を気合いを入れて崩した。
桜子は、一気に伊右衛門を飲み干すと、空のペットボトルをごみ箱の小さな穴に投げつける。
カコーンと小気味いい音を発て、ごみ箱の奥に消えた。
こころもニヤリと笑い、
牛乳の1リットルパックをグッと圧縮すると、
「ウチも出来るとよ」
そういって投げつける。
牛乳パックは、確かにごみ箱に消えた。
ガゴーンとどデカい音と引き換えに、中のゴミを撒き散らして。
こころは顔を真っ青にすると、
「ちゃー、やらかしたとよ~~~」
藍が屈託なく笑い、
「ほんま、こころちゃんは加減を知らん、力馬・・・」
ベスが慌てて藍の口を抑え、
「藍、ややこしくなるから言わないの」
軽くため息を吐いた瑠奈が、そそくさとセブンイレブンに箒とちり取りを借りに走っていった。