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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
三日目
194/243

ep.194 哀歌

“河内稲美会”会長補佐、これが岸田の今の地位である。

今までなんとか、任侠の世界でのし上がってやろうと、彼なりに努力してきた結果だ。

しかし、岸田はふと思う。

《本当に、それが正しかったのかと・・・、だったら、何で俺は・・・》

岸田は今、堺インペリアル・ホテルの厨房、そのゴミ捨て場に隠れていた。

臭いがキツい。

《何やねん、何やねん、あのガキ・・・。人間ちゃうで、あの強さは・・・》

痛みが走る。

岸田の足をネズミがかじったのだ。

(いて)ーっ」

慌てて自身の口を押さえた。

《あかん、あかん。見付かる訳にはいかへんのや・・・》

暗闇を見つめ、岸田は思い出す。


地下1階の地下駐車場にほうほうの体で戻ると、黒いスーツを着た怖いオーラを放つ男達が、弟分達を次々と何処かへ運び込んでいたのだ。

《なんやったんや、アレ・・・。ヤクザには見えへんかったけど・・・。軍隊か?まさか、ここ日本やで・・・》

車での逃走を諦め、1階のロビーへ階段を使いこっそり戻った。

そこにも、弟分達は居なかった。

《どうなってんねん・・・》

岸田は思いつくまま弟分達の携帯を掛けるが、誰も出ない・・・。

不安に襲われた。

壱野に至っては、留守番電話にすらならなかった。

岸田の頭に、“着信拒否”という言葉が浮かぶ。

《あの野郎、裏切ったか・・・》

パトカーのサイレンが聞こえてきた。

《マズい・・・、ポリや。えっと・・・、隠れる所は・・・》

そうやってなんとか見付けたのが、1階奥にあるホテル厨房のゴミ捨て場だったのだ。


《此処で今日の処は、しばらく身を隠すしか・・・》

その時、岸田の携帯が鳴った。

急いで携帯を見る。

携帯に“姫路不動組”組長・飯本の文字。

出ると、知った声が・・・。

「おぉ、飯本か、助かった。壱野と連絡着かへんのや・・・」

岸田が固まった。

汗が一気に噴き出し、背中を濡らす。

「えっ、そやかて・・・。ちょ、ちょっと待ってくれ。おっ、おい!飯本、飯本!」

電話は一方的に切られた。

着信元をリダイヤルで掛け直すが、当然の如く出ない。

“姫路不動組”の電話もである。

《くっそー、こうなったら、一度戻って姫路へ直談判や。それしかあれへん。それしか・・・。やないと、俺、極道としても生きていかれへんがな・・・》

今はただ、ゴミ捨て場の壁を見るしかなかった。

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