ep.192 焼き肉と開けてしまった不幸なケン
「とりあえず、さっさとこのヤクザ片してしまいますね。ジョージさん、タケさん」
サトシがケンとダンに指示を出し、男達をどんどんエレベーターに積めていく。
ジョージも男を運びながら、不思議そうに首を傾げ、
「しっかしよぉ、タケ」
タケも男を担ぐと、ニヤニヤし、
「どうした?ジョージ」
「何で真っ裸のヤツが、混じってるんだ?」
「気になるかい?」
「ああ」
「多分余興の一貫だろ?」
「素っ裸になるのがか?」
「恐らくな」
「この散りじりの服もか?」
「ああ、しかも新手のな」
「深いな・・・」
「確かに・・・」
そんな二人をよそに、サトシが素っ裸の男の足を引っ張りながら、
「コレ片付いたら、昼メシ、ジョージさんの奢りで“焼き肉”なんすよね?ゴチになります」
ケンやダンも、『ゴチになります』と続けた。
ジョージはタケを睨むと、
「おい、タケ。俺は“玉将”は奢るつもりはあっても、“焼き肉”は・・・」
タケは、チッチッチと指を振ると、ジョージの肩を抱き、
「天下のジョージさんが、そんなセコい事言っちゃいけない。ましてや、あのキャバ嬢、確かアリスちゃんだっけ?その娘との間、盛り上げて欲しいんだろ?だったら、先行投資しなきゃな」
こんな時のタケは意地悪だ。
ジョージは、盛り上げてもらっている自分とアリスちゃんを想像して、ニヤニヤすると、
「そ、そうだよな。やっぱ先行投資は必要だよな。よーし、了解った!お前ら、この後、“焼き肉”奢ってやる。だから、その粗末なモンぶら下げてる野郎、さっさと片付けろ。キリキリ働けや!」
ダン、サトシ、ケンは、『イヤッホー!』と叫び、ガッツポーズをした。
更にタケは、ジョージの肩を抱いたまま囁く、
「ついてはだな、ジョージ。美味い焼肉屋が川向こうの住之江区にあるんだ、そこにしないか?」
「美味いのか?そこ?」
タケは目を閉じ、実際の焼き肉思い出す。
首を軽く振ると、
「ん~、この上なく美味いな。たまらんぞ、あの見事にサシが入ったロース、バラ、それからハラミもいいな」
ジョージもニヤリとし、
「決まりだな」
そんな焼き肉に夢中なジョージとタケが、ケンの叫び声で現実に引き戻された。
不幸にもケンが、あのリリーシャが居たVIPルームを開けてしまったのだ。