ep.190 “懺悔”と“散華”
「ちゃー、こりゃなんね?」
こころが最上階のレストランに踏み込むなり、頭を抱えた。
こころが驚いたのは、殴られ倒された男達や、暴れた後の無茶苦茶なレストランではなく、素っ裸で倒れている男が二名いたからだ。
両名とも小汚い尻を曝している。
藍が、きゃははと笑いながらこころに近付き、
「桜子ちゃんが、ヤったんどす」
こころは目を真ん丸にして驚き、
「どーやったら、これだけ綺麗にすっぽんぽんになると?」
「さぁ?“以蔵”ちゃんも『初めて見る技じゃき』って、言うてましたなぁ。確か、技の名前は“ざんげ”・・・」
「“懺悔”ねぇ・・・。、そりゃ悔い改めたくもなるとよ、小汚か尻ば曝すけん」
そう言うと、深くため息を吐いた。
桜子が此処にいれば、漢字が違うと反論したであろう。
実際には“散華”が正しい。
衣服が、花びらの散る様に舞うから“散華”である。
間違っても小汚い尻を曝すからではない。
VIPルームから、こころに声が掛かる。
「こころー、Youモ手伝ウネー!」
裸の男がどうしてここに居るのかなど全く興味が無いローズは、成人男性一人がすっぽり入る拉致用スーツケースを持ってさっさとVIPルームに入っていたのだ。
こころは、やれやれといった面持ちで、
「行くとよ、藍」
藍はにぱぁと笑うと、あいっと敬礼する。
一方、桜子であるが、こころ達に連絡した後、手早く裕一に目隠し、さるぐつわ、そして、両手を背中で拘束すると、
「藍、アタシはフロントで話付けてくるから、こころとローズが来たら裕一ちゃんのバカ兄をキューブまで運ぶよう伝えて。それから、ベス。二人が到着したら、直ぐに瑠奈の所まで戻ってあげてね。さっきの事があるので心配だわ」
桜子の言うさっきの事とは、“闇より出でし者”リリーシャの事であった。
「じゃ、よろしく」
そう言って、立ち去ろうとするが、ふともう一つのVIPルームが気になった。
《あそこからリリーシャは、出てきたのよね・・・》
自然と足が向く。
チラリと見るなり、近くのナプキンでドアノブを掴み、大急ぎで扉を閉めた。
《これは・・・》




