ep.187 これは出来て?
レストランに僅かにいた他の客やスタッフが、悲鳴を上げレストランから飛び出していく。
レストラン入口にいた桜子は、向かって来る群集にカッと目を見開き催眠術をかけた。
群集が動きを止め、全員その場に崩れ落ちる。
桜子は、眠る全員に囁く、
「全ては夢、アナタ達は夢を見ているの・・・。目覚めたら、何も覚えていないわ。だから、ゆっくりおやすみ・・・」
桜子は、先程藍から投げつけられた日本刀“乙女”を引き抜く。
刃を見て、思わず言葉がこぼれた。
「綺麗・・・」
軽く振ってみる。
確かに、“乙女”は手に馴染み、イメージ通りに扱う事が出来た。
“乙女”に軽くキスをすると囁く。
「行くよ、“乙女”!力を貸してね」
鞘をベルトに括り着け、意を決しレストランの中に飛び込む。
倒すべき男達は、レストラン内に全部で六人いた。
既に藍が三人屠り終わり、
「何じゃ、遅かったのぉ。もう半分、片付けたき。小娘、おまんは、そこで屁でもこいて、見てるがええがじゃ!」
そう言うやいなや、残った男の一人が放った弾丸を、僅かに首を傾げて避ける。
更に踏み込み、気合いと共に下から拳銃を切断すると、みね打ちで左肩から一気に切り伏せた。
藍は、桜子に顔を向けニイッと笑うと、
「ワシも、“逆燕”は出来るぜよ。光司郎に教えてもろたきの」
桜子は、フンといった表情で、
「だったら、藍。これは出来て?」
そんな桜子と藍の会話に切れた男が、
「黙って聞いてりゃ・・・。ワレら、ぶち殺・・・」
全ての言葉を言い放つ前に、桜子が刃を振るい男の真横を駆け抜ける。
クルリと振り返ると、“乙女”を鞘に直した。
チンと鯉口が閉じる音を発てた時、男の衣服がバラバラに飛び散り、叫び声を上げつつ男が意識を失った。
「今のは“散華”。藍、出来て?」
藍が最後の男を睨みつけ、踏み出した瞬間、
「いっ、嫌だっ・・・。ばっ、化け物・・・。こっちへ来るな!」
そう言って後ずさり、拳銃を藍に投げつけると一目散に逃げ出す。
桜子が動いた。
素早い動きで力任せに鉄扇を、男の頭へぶつける。
男は絨毯に顔面から倒れこむと、ピクリともしなくなった。
片や藍は、投げつけられた拳銃を切断するも、最後の獲物の屠れなかった事を残念がり、
「あー、ワシの獲物が・・・」