ep.182 こころ、危機一髪
こころは、男の右太股に突き刺さった短刀を見て、
「大丈夫、これ位じゃ死ぬ事は無かと」
無邪気に笑いながらそう言い放ち、半円を描きながら右足首を男の頭上に持っていくと、踵を雷の如く落とす。
逃げ場のない力のベクトルは、男の身体を突き抜け大地へと還っていった。
男は白目を剥き、うわ言を漏らすとそのまま倒れ込む。
「悪か事するけん」
刹那、こころの首筋に鉄の冷たさが伝わる。
「手を挙げてろ!」
最後に残った男が、拳銃をこころに突き付けていたのだ。
《ちゃー、やらかしたと・・・》
こころは軽くため息を吐くと、しかたなく両手を挙げた。
更に男は、ローズに対して吠える。
「お前も拳銃棄てねーか!この女がどうなってもいいのか!」
ローズは、男がこころに拳銃を突き付けた瞬間に、自身もホットパンツから拳銃を引き抜くと、男の顔に狙いを定めていたのだ。
《Oh, shit! How could be・・・.(あっ、しまった!どうしたら・・・)》
こころは、意を決しローズを見ると、
「ローズ、気にする事はなか。遠慮無く撃つとよ!」
「じゃかましんじゃ、この女!」
そう言って、男が拳銃を首筋から離し、グリップで殴りつけようとした瞬間、ほんの僅かだが隙が生まれた。
《!!!、今と!》
こころは、しゃがむと直ぐさまジャンプし、拳銃を狙い、ローリング・ソバットを放つ。
足の裏が綺麗に、男の拳銃を持つ手にヒットした。
計ったようにローズは、拳銃を投げ付け、男の顔面に直撃させる。
グニャリと鼻が潰れた。
更に、ローズは雄叫びを上げながら走り出し、左のラリアットを男の首筋に叩き込む。
そのまま地面に叩き付けられていれば、まだマシだったかもしれない。
同じタイミングで、こころがムチのように左脚をしならせ、体重を載せたハイキックを男の首筋の後ろに放っていたのだ。
骨が砕ける嫌な音がして、男は哀れにも崩れ落ちる。
ローズは、こころに目を向けるとニッコリ笑い、
「Nice fightネ!」
「アンタも!」
そう言って交わすこころとローズのハイタッチが、公園に快く響いた。