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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
一日目
18/243

ep.018 グラジオラスの花言葉

博愛会・富田森記念病院のロビーで稲美雪江がため息を()きながら、時間が過ぎるのを待っていた。

横には白いグラジオラスの花束が置いてある。

どうやら誰かの見舞いに来ている様だ。

雪江は目の前に人影を感じ、視線を移すと同じ聖クリの生徒が立っていた。

《この人、確か、電車が同じ先輩・・・。しかも学園の有名人の一人・・・》

その先輩の有名人が、にっこり笑って、手に持っていた午後の紅茶ロイヤル・ミルクティーを差し出す。

「たまに、挨拶してくれるよね?」

「!?」

聖クリでは、上下関係がしっかりしており、顔見知りで有ろうが無かろうが、登下校時に先輩と認めたならば、挨拶する習慣があるのだ。

雪江は、差し出されたミルクティーを受け取る。

「失礼ですが・・・」

雪江も、相手が学園の有名人である事は知っていても、名前までは記憶にない。

いや興味が無かったと言うべきか・・・。

「ぁ~、ぃきなりでびっくりしたよね。ゴメンなさぃ。ァタシは瑠奈(るな)鳩村(はとむら)瑠奈」

そう言って、ペコリと頭を下げた。

雪江がどう返答しようか迷っている。

「グラジォラス、綺麗だよね~。花言葉は、確か・・・、忍び逢い、思い出」

瑠奈の何気なく言った花言葉に、雪江は思わずドキっとした。

「誰かのぉ見舞ぃ?ァタシもなんだっ・・・」

そう言って、鞄の横に置いてあったデパートの包装紙に包まれた菜の花を取ってきて、雪江に見せた。

「でも、ァタシん家、裕福じゃなぃから、ぃつも途中の河原で摘んでくるの」

裕福な家庭の子が多い聖クリにおいて、瑠奈の自分で摘んで持ってくる行動は雪江には新鮮に思えた。

《この先輩も、どこかのお嬢さまだと思っていたけど、違うんだ・・・》

「ァナタ、ぉ名前は?」

「1年B組、稲美雪江です」

雪江は、名乗って頭を下げた。

「どんな字を書くの?」

「稲が美しいで稲美、雪の降る(かわ)で雪江です」

瑠奈は首を傾げ、指で空中に線を三本引く。

「川?」

雪江は、首を横に振り、空中に指で書く。

「さんずいにエの(かわ)です」

理解した瑠奈は、

「ぁ~、揚子江の(かわ)ね、やっと理解(わか)った」

と笑う。

苦労をした果てに掴んだ無垢の笑顔で・・・。

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