ep.178 みんなには内緒よ
『大魔女ソーニャ・スノウィオウロードの孫にして代理人であるエリザベス・スノウィオウロードが、水の精ニンフ・風の精シルフに願う、我に神の雷を!トゥール・ハンマーーー!』
そう言い放ち、もう一度、呪文を取り囲むように大きい真円を描くと、魔法陣は右手に小さくなって収まり、そこに向かって無数の光が集まりだす。
電気がパチパチと弾ける音が聞こえてきた。
ベスが襲ってきた男を睨みすえ、右手の雷を投げつける。
雷は獣の様に咆哮しながら、最初にベスを襲った男を、次に地下1階全ての車の中を駆け抜けた。
鈴村はへたり込み、失禁して身体中から煙を出している。
ベスは鈴村に近づき、呆けている彼の頭にもう一発雷をぶち込んだ。
鈴村の身体がビクンとして、動かなくなる。
更に言うならば、失禁していた為に、彼の男性器自身が感電し、二度と使いモノにならなくなってしまった。
瑠奈は、思わず声をあげる。
「ベスちゃん、凄ぃ」
刹那、殺気を感じたベスは、
「瑠奈ちゃん、屈んで!」
そう言うと、もう一発雷を、瑠奈の向こうにある階段目掛け放つ。
壱野が拳銃を構えていたのだ。
壱野は、雷が放たれる前に拳銃を投げ出すと、階段に引っ込む。
雷は拳銃に落ち、火薬を爆発させた。
煙に反応したスプリンクラーが作動し、天井から水がまかれる。
《ちっ、なんなんだよ。アレは・・・。こいつら化け物か?とりあえず逃げなきゃ・・・》
そう舌打ちすると壱野は、1階を目指し走り出した。
片や水に濡れているベスと瑠奈は、顔を見合わせクスクスと笑い、
「とりあえず、下のローズの車に、タオルが有るはずだから戻りましょ」
「そぅだね。風邪引ぃちゃぅもんね」
そう言ってスロープを下って行った。
瑠奈が不思議そうに、
「ねぇ、ベスちゃん。ァレって、ァニメや映画に出てくる魔法?」
ベスは悪戯に笑うと、
「だとしたら、アタシが怖い?」
瑠奈は首を横に振り、
「ぅぅん。すっごーく、カッコ良かったよ。色々使ぇるの?」
ベスは肩を竦め、
「まだまだ勉強中なの。お祖母さまは、生ける伝説って言われた“大魔女”なんだけどね。あっ、コレ、みんなには内緒よ」
そう言って軽くウィンクした。