ep.177 瑠奈のパンチとキレたベス
壱野に命ずるられるがまま天塚と鈴村は、瑠奈とベスに狙いを定める。
鈴村は、かなり鼻息を荒くして、
「あっ、天塚くん。ぼ、ボク、お人形さんみたいな外人の女の子がいいな」
「鈴ちゃんは、ホントに美少女好きだな。今は拉致るだけだぜ。強姦っちゃいいかは、壱野のアニキに確認取らないとな」
鈴村は鼻の下を伸ばし、ニヤニヤすると、
「だっ、大丈夫だよ、あっ、天塚くん。ちょ、ちょっと捕まえる時、おっぱい触るだけだから。はぁはぁ」
天塚は、深くため息を吐くと、
「しょーがねぇなぁ。ほら、行くぞ」
天塚は瑠奈を、鈴村はベスを目指し駆け出した。
瑠奈は丁度、3台目に取り掛かろうとした矢先、後ろから声を掛けられる。
「嬢ちゃん、何ヒトの車に、イタズラしてるのかなぁ?」
「!?」
瑠奈が恐る恐る振り返ると、腕組みをした小太りのチンピラが立っていた。
瑠奈はとっさに頭を下げ、
「すっ、すぃません」
「話があるちょっとお前、こっちに来い」
そう言って天塚が瑠奈の右腕を捕まえた時、カウンターで瑠奈の左フックが天塚の顎先を掠めた。
「おっ、お前何を・・・」
天塚は膝を着き、瑠奈の集中砲火を浴びる。
ジャブ、フック、ストレート。
瑠奈の最初の拳が頭蓋骨の中の脳を揺らし、平行感覚を奪っていたのだ。
みるみる天塚の顔が腫れていく。
「や、止めて・・・」
最後の言葉をいい終わる前に天塚は、気を失う。
瑠奈が踏み込み渾身の左アッパーを、天塚の下顎にぶち込んでいたのだ。
天塚は綺麗な放物線を描き頭から落ちると、泡を吹き動かなくなった。
「ぁっ、ベスちゃん」
瑠奈がベスの方を見ると、『メテオ・ドラグーン』の掛け声と共に、かなりのスピードでもう一人のヤクザが、ぶっとばされた瞬間だった。
ベスは襲われた際に胸を触られたのが、かなり機嫌をそこねる行為だったようで、
「面倒臭い・・・、全て壊してやる・・・」
ベスは、右手の人差し指と中指をピンと伸ばし、左手首のブレスレットのクリスタル、サファイア、エメラルドの順に触り、空中に古代ゲール語で魔法陣を描いていく。