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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
三日目
175/243

ep.175 紅い瞳、悪い予感、そして、つねられた頬っぺた

カチャリ。

蝋のように白く長い指が、銀のフォークとナイフをマイセンの皿の上に静かに置いた。

どうやらそこは特別誂えの部屋の様で、空気すらもピンと張り詰めていた。

皿の上にはレアに焼かれているやたら脂身の多い肉が、まだ半分以上残っている。

何の肉だろうか?

『もう、いいわ。下げてくれる?』

ロシア語?と思われる言葉でそう言い放った女は、腰まである見事なブロンドを持つ白人女性であった。

その瞳は、血のように紅い。

グラスの赤ワイン・・・、いや、赤ワインよりもドロリとした液体を飲み干すと、妖しく微笑み、

『ほぅ、何やら下が騒がしく・・・』


下りエレベーターの中で壱野は、珍しくイラつきながら、

《ホンマ、あの岸田は使えんな。下でゴタゴタの連絡あっても、全く動かんし》

ジャケットの内ポケットから、マルボロ・メンソールを取り出すと軽く落胆した。

《何だ、(カラ)か・・・。らしくねぇ。そうだ、こんな時ってのは、昔からそうだよな・・・、嫌な事が・・・》

そんな気の進まない壱野を載せ、エレベーターは無慈悲にもロビーを目指す。


片や隣のエレベーターでは、妙にニコニコした藍と、やや欲求不満な桜子が最上階に向かっていた。

瑠奈とベスに指示を出し終えた桜子は、軽くため息を()き、

「さっきは助かったわ、藍。ありがと。でもまた、“晴明”を使ったでしょ?」

どうやら、桜子は藍に憑依する平安最大最強の陰陽師“安倍晴明(あべのせいめい)”を、技か何かだと思っているらしい・・・。

藍は、そんな事は全く気にせずに、ニッコリ笑うと、

「それはよろしおましたなぁ。“晴明”ちゃんも、力になれて良かった言うてます」

「???まぁ、いいわ。気を引き締めて行くわよ」

そう言って桜子が気合いを入れ直した時である。

サワ。

サワサワ。

桜子は顔を真っ赤にし、

「ち、ちょっと、藍。何するのよ!」

桜子は、藍の左手を捕まえる。

藍が、桜子の尻を撫でていたのだ。

藍は全く悪びれた様子は無く、にばぁと笑い、

「へえ、“晴明”ちゃんは、報酬ゆーてます。『桜子は尻じゃ』って。なんでも、桜子ちゃんは、世に稀に見る“美尻”らしいどす。胸は“残念さん”らしいどすけど・・・」

数秒後、桜子に藍が頬っぺたを思い切りつねられたのは、言うまでもない・・・。

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