ep.174 Come on, you cherry boyz!
「頼んだわね」
閉まりゆくエレベーターの中から桜子が、こころとローズに声を掛ける。
二人は振り返らず、軽く手を挙げて答えた。
足どりは、軽い。
堺インペリアル・ホテル1階ロビー、ヤバそうな匂いを放つ男達はざっと見回して10人といったところか。
こころが思わず漏らす。
「ちゃー、こんくらいやったら、一人で十分やったと」
ローズも同じ意見のようで、
「本当ネー、Gunガ有ーレバ、一瞬ネ」
「え?ガン?ピストルと?」
「ハハハー。こころ、気ニシナーイ」
こころは軽く首を傾げ、
《たまにローズも、怪しか事言うと。実際、アメリカで撃ってそうとよ・・・》
ローズが、ん?といった表情をしたので、こころは笑ってごまかした。
こころは、ローズに耳打ちする。
「とりあえず、あの玄関近くの二人に先制攻撃しかけると・・・」
言うやいなや、こころは駆け出す。
ローズも続く。
駆け出したこころとローズに、ロビーのヤバい男達はざわめきたつ。
入口付近に立つ二人の男達を除いて・・・。
驚く間もなく、秒殺されその場に崩れ落ちた。
一人はこころの右ストレート、もう一人はローズの左飛び膝蹴りを喰らって。
男達が仲間を助けようと、怒鳴り声を上げながら駆け寄って来た。
ローズはライダージャケットのジッパーを下ろし、胸の谷間をこれでもかと見せつける。
右の中指をピンと立て、お決まりの“Fuck you!”ポーズを取り、左手で挑発的に誘うと、
「Come on, you cherry boyz! (掛かってきな、この童貞野郎!)」
と、いつになく妖艶に笑い言い放った。
馬鹿にされていると感じた男の一人が殴りかかるが、カウンターでローズのハイキックを顔面に喰らったのは言うまでもない・・・。
十分だとこころは悟り、
「ローズ、行くったい!」
こころがホテルの玄関から飛び出す、零コンマ数秒遅れでローズが、更に男達が続いた。
勿論、一度倒された男達も、仲間に引き起こされてである。
その頃、地下2階では瑠奈とベスが、桜子から指示を受けていた。
「了解、じゃあその7台を、動けなくすればいいのね」
指示を聞いたベスが、黒いオーラを放ちながらクスっと笑った。