ep.170 ジョージの苦手なモノ
桜子達が出発したのを、学校の駐車場から双眼鏡越しに見ていた男達がいた。
《ケルベロス》のタケとジョージだ。
二人はタケの愛車・ベンツ・E300に乗り込むと、エンジンを掛けすぐに桜子達を追った。
ステアリングを握るタケを横目に、ジョージが車載の無線機を取り、
「本部!取れるか?こちら、《ケルベロス》ジョージ!」
返事はすぐあった。
『はい、こちら本部。ジョージさん、お疲れ様です。どうしました?オーバー』
ジョージは怒鳴る。
「嬢ちゃんが動いた。今、本部の《ケルベロス》メンバー、誰がいる?」
『はい、近くにヒロさんが居ますが。オーバー』
「代わってくれ!」
『ジョージさん、ヒロです。オーバー』
「ヒロか?昨日の嬢ちゃん覚えているか?」
『はい、ボスの可愛がってる女の子ですよね。オーバー』
「あぁ、たいしたタマだぜ、あの嬢ちゃん。仲間引き連れ、カタ着けに行きやがった。手の空いてる奴引き連れ、応援頼めるか?」
『はい。シゲさんとシュウを連れて行きます。で、何処まで行けば?オーバー』
「目的地は、堺インペリアル・ホテル。バスで来てくれ。それからなっ、恐らく怪我人多数でるから、港区のクララ会病院にも受け入れ準備の手配を、頼む」
『了解。30分で到着出来ると思います。それじゃあ、現地で。オーバー』
ジョージは無線を切ると、
「しっかし、どんだけの事を引き起こしてくれんだか、楽しみだな。タケ」
タケは運転しながら器用に左手でマルボロを取り出し、くわえると火を着け、
「ジョージ。お前、かなり今、ワクワクしてるだろ?」
「理解るかい?タケ」
タケは、フーッと煙を吐き、ニヤリと笑うと、
「あぁ、俺は、お前の相棒だからな」
「タケ、お前にゃ敵わなねぇな。ガハハっ」
「で、ボスにも報告しなきゃな」
ジョージは、急に顔を引き締め、
「それなんだがよぉ、タケ、お前がしてくれちゃもらえねぇか?」
タケは目を細め、
「断る。お前がしろ、ジョージ」
ジョージは目を見開き、
「ええっ!勘弁してくれよ。苦手なんだよ、携帯でボスと喋るの。直接なら、まだマシなんだけどよぉ」
タケは、ククっと笑い、
「しょうがないなぁ。昼メシ、お前持ちな、ジョージ」
ジョージは深くため息を吐くと、
「恩に着る、タケ。片したら、餃子幾らでも食ってくれ」