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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
二日目
156/243

ep.156 不細工なウサギのぬいぐるみの名は、晴明

ベスが玄関でブーツに足を通した刹那、背後に気配を感じ振り返る。

藍が、実家の老舗料亭旅館・“佐津眞(さつま)”の浴衣を着て、左腕に不細工なウサギのぬいぐるみを抱え立っていた。

首を傾げ、にぱぁと笑い、

「お出かけどすか?ベスちゃん?」

ベスは少しだけ動揺し、

「ええ、ちょっと気分転換にひとっ走りして、帰りにコンビニに行ってこようかと・・・、藍はこんな時間にどうしたの?」

「ウチどすか?寮に張ってる決界が振動したんで、晴明ちゃんに起こされたんどす?」

「晴明・・・ちゃん?決界?」

藍は、抱きしめてる不細工なウサギのぬいぐるみを見せ、

「へえ、コレが晴明ちゃんどす」

そして、ぬいぐるみをプルプルさせ、全く口を閉じる事もなく、本人は腹話術をしているつもりで、少ししわがれた声をだし、

「やぁ、お嬢さん。ワシが晴明じゃ。仲良くしてたも~」

ベスはクスッと笑うと、右手でぬいぐるみの右手を掴み、

「よろしくね、晴明ちゃん」

「うむ、こちらこそ。決界の振動が(ヌシ)で良かった。気をつけて行かれよ、異国のヒト」

藍は、相変わらずしわがれた口調で話し、ぬいぐるみをプルプルさせている。

ベスはクスッと笑い、

「じゃあ、アタシ行くわ。お休みなさい、藍」

藍はいつもの京都弁に戻って、ペコリと頭を下げ、

「へえ、ウチは寝るよし、ベスちゃんは気ーつけえ。ほな、お休みなさい」

ベスは頷くと、寮の扉を開け出ていった。

残された藍は、少し上を向き何もない空間に語りかける。

「晴明ちゃん、ベスでよろしおしたなぁ~」

安部晴明が心に話かけてくる。

『ほんに、ほんに。しかし、藍よ、そのぬいぐるみは、ちぃーともワシ似ておらんのだが・・・』

『いやいや、案外似てるぜよ、晴明じーさん。性格の悪い所とかがぜよ』

『そうそう、見た目ではなく性格の悪い所って・・・、コラ!以蔵、何を!今日という今日は・・・』

『ひーっ、助平じじいが怒ったぜよ~』

『誰が助平じじいじゃ、待てこの若造がぁ~』

もし霊力のある者がここにいれば、火の玉の追い掛けあいを見ることが出来たはずである。

藍は、また空間に語り掛ける。

「さて、写楽ちゃん、明里ちゃん、小督ちゃん、男はんはほっといて、ウチらは寝るえ。明日は、何かしらお力を借りなあかんと思うよし」

『そうですね、そのほうが』

『ほんに』

『ええ』

藍は、扉に背を向け、桜子とこころが眠る部屋に戻って行った。

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