ep.155 さて、そろそろ出掛けようかな・・・
《さて、そろそろ出掛けようかな・・・》
先程までブレスレットを耳に当て、何かを聞いていたベスは、ベッドからむっくり起き上がる。
時計は既に11時半を回っており、皐月のベッドでは直子が、そして、空いているベッドでは雪江がすやすや寝息を発てて眠っていた。
ローズは素っ裸のままで、ブランケットに包まっている。
《しかし、ローズは本当に開放的ね・・・》
そう思いながらベスは、白梟のプリントが入ったピンクのパジャマを上・下と次々脱ぐ。
ブラジャーは着けてなかったので、形の良いDカップの胸が現れる。
ベス自身でもお気に入りの身体のパーツだ。
箪笥の一番上の引き出しから、ストラップレスの純白のブラジャー取り出し、手慣れた手つきで身に着ける。
次に二番目の引き出しから、アンゴラのセーターを取り、羽織った。
薄手の割に熱が逃げない。
これも恐らく何かしらの魔法がかかっている事は、明白であった。
白い靴下を履き、最後に一番下の引き出しから、Abercrombie&Fitchのブーツカットのジーンズを出して履く。
姿見の前で軽くポーズを取って、鏡に尋ねる。
《アタシ、可愛いかな?》
鏡の精が、“最高!”と答えた気がした。
気を良くしたベスは、クローゼットからはねくみ特製の漆黒のライダージャケットを取り出す。
左腕は白に染められ、肩に05、背中には白梟のシルエットが抜かれている。
ライダージャケットに袖を通し、きっちりジッパーを締めると、もう一枚クローゼットから取り出した。
ビロードのような光沢をもった黒いローブである。
ライダージャケットの上に、そのローブを羽織る。
最後に、左手に真っ白なライダーブーツを持ち、右の肘にパールホワイトにユニオン・ジャックがあしらわれたヘルメットを引っ掛けた。
部屋を出ようとした時、ローズが寝言を言った。
「Take care, Beth. (気をつけてね、ベス)」
ベスは驚き、一度ブーツとヘルメットを足元に置き、ローズに近付く。
ブランケットをかけ直してやり、
「Thanx, Rose.(ありがと、ローズ)」
頬に軽くキスをする。
ベスは、もう一度ブーツとヘルメットを持ち直しドアを開け、猫の如きしなやかさと素早さで玄関を目指した。