ep.153 何の罪か知らんけど
「あ、あの金バッジか?あれやったら、返した」
ハルナはかなり驚き、
「え?ちょ、ちょ、ちょっと、山崎さん。返したって、アレはアンタらの世界で大事な・・・」
山崎は頷くと、辛そうな面持ちで、
「そや。大事なもん、大事なもんやからこそ、返したんや。俺は、身に着ける資格が無いから・・・」
「資格が無いって・・・、山崎さん」
山崎は何かを振り払うかの様に、首を横にブンブン振り、
「まっ、そんな事より、コレやコレ」
山崎は、ジャケットのポケットから封筒を取り出す。
それをハルナに押し付け、頭を下げた。
「昨日は迷惑かけて、スマンかった。助かった」
「えっ?あのコレって、昨日ウチが立て替えた分?」
ハルナは、封筒の厚みに少し違和感を感じ、
「んん?」
封を開いて、札を取り出す。
「あれ?ひぃ、ふぅ、みぃ・・・。山崎さん、コレ多いで・・・」
ハルナが首を軽く傾げると、山崎が、
「迷惑料や、取っといてくれ」
「アカンて~、立て替えた分よか、迷惑料の方が多いやん」
「ええんや、気持ちや気持ち。ヤクザに恥かかせんでくれ」
ハルナは軽くため息を吐き、封筒をポーチになおす。
にぃーと笑うと、
「まぁ、山崎さんがそう言ってくれるんやったら、しゃーない。もろたげるわ。で、ウチに頼みたい事って、何なん?」
山崎は、もう一通封筒を取り出すと、
「コレ、預かっておいて欲しいねん。もし、近いうちに俺の身の上に何かあって、ニュースや新聞に載ったら、そん時はコレを吉野の俺の嫁さんに渡して欲しい・・・。これで、生まれる子供を育ててくれって。別れた時に300万しか渡せんかったしな。頼めるか?」
ハルナはかなり驚き、“はっ”と気付き、
「山崎さん、アンタ・・・、何があったん?まさか・・・、死・・・」
山崎は左手でハルナの口を抑え、
「シッ、ハルナちゃん、そんな言葉言うもんやない。俺はケジメを付けるだけや、俺自身と俺の罪のな」
《はぁ?この男も・・・》
ギリっと、ハルナの口の奥で嫌な音がした。
山崎の手を自身の右手で掴み、外す。
睨み付け、左手で山崎の頬を叩いた。
渇いた打撃音だけが、店の中に響き、
「お前、何さらす・・・」
ハルナは遮る。
「何考えてんねん、このドアホ!何の罪か知らんけど、そんな事して、アンタの奥さんや、政さんが喜ぶって思てんのか!」