ep.151 アンタ、ミテコやろ?
「ったく、もう、何やねん。今日の客、素伝ばっかしで、ドリンクも出~へん。こんなんやったら、B指も取れるワケあれへんやん。どんな客引っ張って来てんねん」
ハルナは、キャバクラ“シャ・ブラン”の控室に戻るとメイクを直しながら、悪態を吐く。
「ハルナちゃん、まぁまぁ、そんなにキレなくても・・・」
ハルナは、声を掛けてきたボーイのユージを睨みつけると、
「ユージ、ウチに声掛ける暇あんねんやったら、外行ってキャッチしてこいや。代表にも言われてるやろ」
ユージは、軽くため息を吐き、
「行きますよ、言われなくっても・・・。新人、紹介したかっただけですやん。代表が、ハルナちゃんに指導してもらえって」
そう言って、一人の女の子を呼んだ。
「シズクちゃん、こっち来て~」
ボーイのユージは一通りの紹介だけすると、ハルナに怒られるのが嫌で、さっさと控室を出て行ってしまった。
ハルナは値踏みする様に、シズクを見詰め、
「で、シズクちゃん。アンタ、ミテコやろ?」
「ミテコって?」
「ん?アンタ、未成年知らんの?18歳未満の未成年って意味やん」
シズクは焦って、
「えっ?違いますよー、ハルナさん。一応、19です」
ハルナは目を細め、
「ウチと仲良くしたかったら、嘘言うたらアカンよ。ホンマはなんぼなん?」
ハルナに威圧されたのか、あっさりと自分の置かれている立場を理解したシズクは、
「すっ、すいません。本当は・・・、じゅ、17です」
ハルナはニカッと笑うと、
「なんや、タメやん。ここだけの話、ウチもミテコやねん。ほな、仲良くしよな。タメやから呼び捨てでええやんな?シズク?」
そう言って右手を差し出した。
シズクは、差し出された右手を握ると、
「はぁ、こちらこそ・・・、ハルナさ・・・」
ハルナが遮る。
「ハルナ。“さん”は、いらんよ」
「じゃ、ハルナ」
「うん。それでいい。とりあえず、団体客とかでウチに指名入ったら、枝で呼ぶから、ウチの動きをマネしてくれたらええよ」
シズクは、ぱぁっと表情を明るくし、
「ホントに?ありがとう、ハルナ」
そんなシズクとのやり取りをしている処に、ユージが顔を出しハルナに声を掛ける。
「ハルナちゃん、指名入ったからお客さん着いて」
ハルナは驚き、
「え?ウチ、今日、A指の予定無いで」
ユージはニヤリと笑い、
「昨日来てた、ヤーさん。自分が立て替えたヒトや」