ep.150 mouthガbad?
「ゴメンね、ローズちゃん。わざわざ送ってもらって・・・」
瑠奈は、ローズの愛車に乗り込むなり礼を言った。
ローズはエンジンに火を入れ、瑠奈にニッコリ笑いかけると、
「気ニシナーイ、瑠奈。病院デ、良カッタデスカ?」
ローズは何気にご機嫌だ。
瑠奈と二人きりで話する機会が、なかなか無いからである。
瑠奈は大きく頷き、
「ぅん、ぁりがと。自転車置ぃてぁるから」
そして、ローズの操る日産・キューブは、河内長原の街に滑り出す。
正樹の眠る富田森記念病院を目指して。
ローズは、愛車を富田森記念病院の駐車場に止め、
「瑠奈ハ、何時モ忙シーネ。今日モ、アルバイトデショ?」
瑠奈は、珍しく首を横に振り、
「今日は親戚がァルバイトに出掛けるから、ァタシは家でぉ留守番なんだっ」
「シンセキ?」
瑠奈は、ローズが全ての日本語を理解出来る訳ではない事を思い出し、
「ぁっ、ゴメンなさぃ。従姉妹の事、んーと、カズンだょ」
「Oh!cousinネ。私モcousinが3人イマース。New Yorkニ2人、Parisニ1人。cousinト仲イイデースカ?瑠奈ハ?」
瑠奈は目を細め笑う。
「ぅん、とっても!口が、悪ぃケドね」
ローズは首を傾げ、
「口ガ、悪イ?mouthガbad?怪我デモ、シテマスカ?」
瑠奈は、きゃははと笑うと、少し考えハルナの真似をする。
「Look me! Like this. (見て、こんな感じだょ) あー、ワレ、誰に対して物吐かしてんねん。シバくぞ、コラ!」
ローズは目を丸くして、
「Wow! What's a fuckin' cool girl! (ワォ!超カッコイイ女の子なのね!) Let me try. (ちょっと、やらせて) シバクーゾ、コーラ?」
瑠奈は首を横に振り、
「ノー、ローズちゃん。Little bit strange. (ちょっと、変) シバくぞ、コラ!」
ローズは、首を傾げ、
「瑠奈、Could you tell me that what's mean “シ・バ・ク・ゾ、コ・ラ” (“シバくぞ、コラ”の意味を教えて)」
瑠奈は、唇を少し尖んがらせ、
「意味ぃ? Maybe “Fuck you!” (多分、“シバくぞ、コラ!”)」
ローズは悟ったようで、
「Yes! I got it! (うん!理解ったわ!) Like this? (こんな感じ?) シバクゾ、コラ!」
瑠奈は、思わず拍手をして、
「ぅわぁ!出来てるょ、ローズちゃん!」
「アリガトー!瑠奈!」
ローズは、思わず瑠奈を抱きしめた。
瑠奈は、顔を真っ赤にし、
「へへっ、照れちゃうよ」
ローズは、瑠奈を覗き込むと、
「マタ、ジャパニーズ、教エテクレマスカ?」
瑠奈は、ローズの少しでも役にたったのが嬉しく、
「ぅん。今度はBADワードじゃなく、普通のね」
そして、車の時計を見ると、
「ぁっ、そろそろァタシ行かなきゃ。送ってくれて、ぁりがと」
ペこりと頭を下げ、車を降りると駐輪場に向け歩いて行った。
残されたローズは、瑠奈の後ろ姿を見送り、
《瑠奈、I hope your boyfriend will be fine. (彼氏、早く良くなるといいわね)》