ep.149 みんなの意志と悪態を付く地獄の番犬
「了解った。ありがとう、藍」
藍は、にぱぁと皐月に笑いかけると、
「気ーつけて行きよし、皐月ちゃん」
皐月は部屋のドアノブに手を掛け、振り返る。
「桜子、私は闘るから」
桜子は振り返る事もなく、当然といった面持ちで軽く右手を上げ、
「皐月なら、そう言うと思ってた。何かあったら連絡を・・・」
「了解、リーダー」
そう言い残し、皐月は出て行った。
甘く危険な香りを残して・・・。
「さて、他のみんなは、どう?アタシは闘るわ」
桜子が、残った他のメンバーの意志を確認する。
こころが真っ先に、右の拳を左の手の平に打ち据え、
「もちろん、闘るとよ。断る理由はなか」
瑠奈も大きく頷き、
「ぅん、雪江ちゃんが、それで助かるなら・・・」
ローズとベスは、顔を見つめ合い、頷くと、
「ええ。かわいい後輩の為ですもの」
「桜子、I'll do it!」
最後に、藍が纏める。
「ほな、全員一致どすな。作戦はどうなります?桜子ちゃん」
桜子は大きく深呼吸すると、
「作戦は・・・」
聖クリストファー学園国際高校・来客用駐車場にフルスモークのベンツ・E300が停まっている。
車内に男が二人いて、スピーカーから流れる会話を聞いていた。
《ケルベロス》のタケとジョージである。
ジョージは完全にシートを倒して、少しダルそうに悪態を付き、
「なぁ、タケ。何で俺達が、ガキの警護しなくちゃなんねえんだよ」
タケはマルボロ・メンソールに火を着け、深く吸い込むと、
「まぁ、そう言うな、ジョージ。ボス直々のミッションなんて、そうあるもんじゃないぜ」
「確かに、そりゃそうだけどよぉ・・・」
タケが、シッと手でジョージの会話を遮る。
聞き漏らさぬよう、少しスピーカーの音量上げ、
「おい、ジョージ。これは・・・」
ジョージはシートを起こすと、ニヤリと笑い、
「ああ、タケ。確かにこれは、俺達じゃなきゃフォロー出来ねーな」
一通りスピーカーからの会話を聞き終えると、タケは無線のスイッチをオンにし、
「こちら、《ケルベロス》タケ、本部至急応答願います。オーバー」