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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
二日目
147/243

ep.147 痛みの記憶

暗闇の中で何かがうごめく。

男だ。

稲美雪江が桜子達の住む聖マリア寮で深い眠りに着いていた頃、兄・裕一は誰もいない自宅のリビングでうなされていた。

顔は相変わらず腫れている。

《痛てえ、顔が火傷したみてえに痛てえや・・・》


ザザザッと裕一の頭に、ノイズが走る。


《そういや、遠い遠い昔、顔を叩かれた事があったな・・・。俺が好き嫌いや悪戯すると、俺が子供なのに容赦なく父ちゃんのビンタが飛んできたっけ・・・。母ちゃんは、そん度、身を持って庇ってくれたよな、『まだ子供なんだから』って・・・、え・・・?》


《俺は、両親には叩かれた事は無いはずなのに・・・。いや、でも・・・、叩かれた。『ガキだからって、甘やかしちゃなんねえ』って、怖かったな・・・、え?誰が怖かった?父ちゃん・・・?》


《叩かれた事がないのに怖い?いや、確かに叩かれた?どっちだ・・・》


《ちっちゃかった俺に『裕一』と呼びかけるあの綺麗な(ひと)は?俺は知ってる気がする・・・。忘れてはいけない大事な・・・》


《泣いてる・・・、綺麗な(ひと)が泣いてる・・・、『あのヒトが逝ってしまった・・・』って・・・》


《『二人っきりで静かに生きていこう』綺麗な(ひと)は、そんな事も言ってたっけ・・・。でも何で・・・?》


《俺が泣くと、綺麗な(ひと)はクマのぬいぐるみを見せて、『クマちゃんに笑われるよ、裕一』って・・・、そう言っては、抱きしめてくれたっけ・・・。え?でも、ナゼ、抱き・シ・メ・ル?》


《綺麗な(ひと)はベッドに横たわり、泣きながら俺に語りかけてもいたな、『裕一・・・、ゴメンね・・・、ゴメンね・・・、ゴメンね・・・。ママ、これからずっと傍にいてあげれなくってゴメンね・・・』。え!!!ママ?ママ!?ママ!!!》


《そうだ、『今日から裕一は、俺の事をお父ちゃん。この小雪の事をお母ちゃんと呼ぶんだぜ』って、そう言ってこの家に連れて来られたんだ・・・。クマのぬいぐるみだけを持って・・・。でも、さっき自分自身をママと呼んだ綺麗な(ひと)は、一緒じゃなかった・・・。俺は連れて来られた?俺は、稲美裕一じゃ・・・ない?だとしたら・・・、俺は・・・?、俺は誰・・・?誰なんだーーーーー?》


暗闇の中で、裕一の絶叫が響き、そして、またノイズが裕一の頭に走った。

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